
特定口座は廃止されず、源泉徴収ありの税率20.315%や申告不要を選べる仕組みも、2026年8月6日時点では変わっていません。2026年に成立したのは、後期高齢者医療制度で、申告しなければ把握されなかった一部の金融所得を保険料や窓口負担等へ反映するための法律です。
法律は2026年5月29日に成立し、6月5日に令和8年法律第31号として公布されました。ただし、実際の負担反映日は公布後5年以内の政令で定める日です。厚生労働省は公布後4年から5年程度を想定していますが、後ろ倒しの可能性も明記しています。2028年度開始とは確定していません。
直接の対象は、75歳以上の人などが加入する後期高齢者医療制度です。国民健康保険、介護保険、会社員の被用者保険へ同じ仕組みを一斉適用することまで決まったわけではありません。本記事では、成立法の施行時期、対象者、対象所得に範囲を絞って解説します。
| 確認項目 | 結論 |
|---|---|
| 特定口座 | 廃止されません |
| 税率 | 今回の法律による変更はなく、原則20.315%です |
| 申告不要 | 源泉徴収口座内の対象所得は引き続き申告不要を選べます |
| 変わる制度 | 後期高齢者医療の保険料、窓口負担割合等への対象金融所得の反映です |
| 開始時期 | 公布後5年以内の政令日です。2028年度と確定していません |
| 今回の対象外 | NISA口座内の非課税所得、預貯金利子、含み益、資産残高そのものです |
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特定口座のメリットは何が残るのか

「特定口座のメリット終了」という説明は正確ではありません。証券会社による損益計算、源泉徴収、申告不要を選べる税務上の仕組みは残ります。将来変わるのは、後期高齢者医療の加入者が申告しなくても、対象金融所得を保険料や窓口負担等へ反映できる点です。
国税庁によると、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡益は申告不要を選べ、税率は所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%の合計20.315%です。今回成立した法律は、この税率を30%へ引き上げる法律ではありません。国税庁の特定口座制度で確認できます。
なぜ申告の有無で差があったのか
後期高齢者医療制度では、市町村民税の所得情報などを使って保険料や窓口負担割合を判定します。給与、年金、事業、不動産などの所得は、市町村が税情報を通じて把握できます。
一方、源泉徴収ありの特定口座で申告不要を選んだ上場株式の譲渡益や配当等は、証券会社の源泉徴収で課税関係が完了します。確定申告しなければ市町村民税の所得情報へ入らず、同じ金融所得がある人でも、申告した人だけ医療保険の負担が変わる場合がありました。
申告不要を選ぶことは、法律で認められた手続きです。脱税や申告漏れではありません。政府は、税務上の選択だけで後期高齢者医療の負担が変わる状態を不公平として、金融機関の法定調書を医療保険でも利用する仕組みを整備しました。
- 金融機関が税務署へ法定調書を提出する
- 対象情報を法定調書データベースで名寄せする
- 後期高齢者医療広域連合が対象金融所得を把握する
- 申告済み所得との重複を調整する
- 保険料や窓口負担割合等の判定へ反映する
2026年成立法と施行時期

政府は2026年3月13日に健康保険法等の一部を改正する法律案を提出しました。
衆議院は4月28日、参議院は5月29日に可決し、法律は6月5日に令和8年法律第31号として公布されました。
金融機関等は、税務署へ提出する報告書などに記載した上場株式等の配当等に関する事項を、後期高齢者医療広域連合へオンラインで報告することになります。成立・公布状況は参議院の議案審議情報で確認できます。
| 時期 | 状態 | 確実性 |
|---|---|---|
| 2026年3月13日 | 法律案を提出 | 確定 |
| 2026年4月28日 | 衆議院で可決 | 確定 |
| 2026年5月29日 | 参議院で可決し成立 | 確定 |
| 2026年6月5日 | 令和8年法律第31号として公布 | 確定 |
| 公布後2年から3年程度 | オンライン提出の準備・要請段階 | 厚労省の見込み |
| 公布後4年から5年程度 | 保険料・窓口負担への反映 | 厚労省の見込みで後ろ倒しの可能性あり |
| 公布後5年以内 | 金融所得関係の法定施行期限 | 具体日は政令で決定 |
法律上の施行日は、2026年6月5日の公布から5年を超えない範囲で政令が定めます。厚労省の工程を暦に置き換えると2030年から2031年ごろが目安ですが、年度と月は未確定です。公式資料もシステム整備などにより後ろ倒しになる可能性を示しています。成立法律と厚生労働省の工程資料を基準にしてください。
2028年度という説明は、成立前の政策目標、システム準備、実際の負担反映を混同している可能性があります。「法案成立後3年程度」もオンライン提出の準備時期と負担反映時期を区別する必要があります。2026年8月6日時点で、2028年度に全国一律で負担が増えるとは決まっていません。
誰のどの金融所得が対象になるのか
直接の対象制度は、75歳以上の人などが加入する後期高齢者医療制度です。65歳以上75歳未満でも、一定の障害について認定を受けて加入する場合があります。
対象となる中心は、確定申告するか申告不要を選べるため現行の負担に差が生じる、上場株式等の配当や譲渡益などです。対象法定調書の細部や反映方法は、今後の政令、省令、システム仕様も確認する必要があります。
| 項目 | 扱い | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 源泉徴収口座の上場株式等の譲渡益 | 対象となる方向 | 申告不要を選べる所得差を是正するためです |
| 上場株式等の配当等 | 対象となる方向 | 法定調書と申告情報から把握します |
| NISA口座内の非課税所得 | 今回の対象外 | 申告選択による不公平がないと政府が説明しています |
| 預貯金利子 | 今回の対象外 | 源泉分離課税で申告選択による差がありません |
| 株式や投資信託の含み益 | 対象外 | 売却前の評価益は確定した金融所得ではありません |
| 株式等の保有残高 | 直接の対象外 | 資産額そのものへ保険料を課す制度ではありません |
国会審議で政府参考人は、NISA口座内の金融所得と預貯金利子を今回の対象外と説明しました。衆議院厚生労働委員会の会議録で確認できます。
NISAで非課税になるには制度上の要件があります。国内上場株式の配当は、証券会社を経由する株式数比例配分方式などを確認してください。NISAの損失は特定口座と損益通算できません。詳しくはNISAでも課税扱いになり得る注意点をご覧ください。
会社員、国保、介護保険との違い

今回の法律を「金融所得が全社会保険料へ加算される制度」と理解するのは誤りです。成立した金融所得反映の直接対象は後期高齢者医療制度です。
会社員や公務員が加入する被用者保険の保険料は、通常、標準報酬月額と標準賞与額を基に算定します。在職中の株式売却益や配当を毎月の健康保険料へ直接合算する改正ではありません。ただし、75歳になれば原則として後期高齢者医療制度へ移るため、会社員なら将来も無関係という意味ではありません。
国民健康保険と介護保険は、市町村民税の所得情報を利用します。現行でも確定申告した金融所得が負担へ影響する場合があります。しかし、申告不要の金融所得を法定調書から新たに把握し、国保や介護保険へ同時に全国反映することまで今回の法律で確定したわけではありません。
| 制度 | 今回成立した金融所得反映 |
|---|---|
| 後期高齢者医療 | 直接の対象です。施行後に対象金融所得を保険料や窓口負担等へ反映します |
| 国民健康保険 | 申告不要所得の同時全国反映までは確定していません |
| 介護保険 | 今回の直接対象として一律反映が確定したわけではありません |
| 協会けんぽ・健康保険組合 | 在職者の金融所得を通常の保険料へ直接合算する改正ではありません |
厚生労働省の公式モデルでは年51,050円の差
厚生労働省は、申告の有無による現行の取扱いの差を説明する公式モデルを示しています。夫婦ともに後期高齢者で、本人の年金が230万円、上場株式等の金融所得が50万円、配偶者の基礎年金が83万円という仮定です。
| 項目 | 申告なし | 申告あり |
|---|---|---|
| 本人の年金 | 230万円 | 230万円 |
| 金融所得 | 50万円を申告しない | 50万円を申告する |
| 配偶者の基礎年金 | 83万円 | 83万円 |
| 窓口負担割合 | 1割 | 2割 |
| 本人の年間医療保険料 | 118,928円 | 169,978円 |
年間保険料の差は、169,978円から118,928円を引いた51,050円です。窓口負担割合は10パーセントポイント上昇し、割合としては2倍になります。
この公式モデルは、令和6・7年度の全国平均の均等割額と所得割率を使った説明用です。将来施行後の確定額ではありません。個人額は、居住する広域連合、他の所得、世帯、所得控除、保険料軽減、賦課限度額で変わります。窓口負担の年間差は、実際の医療費と高額療養費制度等によっても異なります。厚生労働省の公式モデルを含む参考資料をご確認ください。
施行後の個人額は全国一律ではありません。現行の地域差は2026・2027年度の後期高齢者医療保険料で確認できます。
保険料と窓口負担を分けて試算する
金融所得の反映で変わり得る負担は一つではありません。まず、毎年度支払う後期高齢者医療保険料があります。保険料は、被保険者が負担する均等割と、所得に応じる所得割を組み合わせるのが基本です。低所得者には均等割の軽減があり、高所得者には賦課限度額があります。金融所得へ所得割率を掛けるだけでは、軽減や上限を含む正確な個人額になりません。
次に、医療機関で支払う窓口負担があります。後期高齢者の負担割合は1割、2割、3割に分かれますが、本人だけでなく同じ世帯の被保険者の課税所得や収入など、複数の条件を使う場合があります。所得区分が変わっても、実際の年間負担差は受診回数と保険診療費によって異なります。保険料のように同じ金額が毎年必ず発生するわけではありません。
医療費が高額になった場合は、高額療養費制度の自己負担限度額も関係します。入院時の食費、差額ベッド代、先進医療などは別の取扱いです。金融所得反映による家計への影響を考えるときは、保険料、窓口負担、高額療養費、介護保険などを別々に確認し、最後に合計してください。
反映する所得年と通知時期は今後の案内を確認
法律が成立しても、すぐにすべての法定調書が保険料へ使われるわけではありません。金融機関のオンライン提出、データベースの名寄せ、市町村や広域連合のシステム改修、申告済み所得との重複除外が必要です。厚労省が公布後4年から5年程度を想定するのは、この準備期間があるためです。
施行年度が決まった後も、「何年中に得た金融所得を、どの年度の保険料や何月からの窓口負担へ使うか」を確認する必要があります。現在の所得判定の時期をそのまま将来制度へ当てはめず、政令、省令、広域連合の案内を待ってください。
個別試算では、使用した制度年度、居住都道府県、世帯の後期高齢者数、本人と家族の年金収入、金融所得、所得控除、現在の負担割合を記録します。条件の違う試算同士を比べると、制度変更による差と地域差・所得差を取り違えてしまいます。
確定申告の判断は税と保険を合わせて確認
申告の有利不利は一律に決まりません。損益通算や損失の繰越控除などの税効果だけでなく、医療・介護保険や各種給付への影響も含め、世帯の手取りで比較してください。申告手順は会社員が確定申告を検討するときの手順を参考にし、個別判断は税務署、広域連合、市区町村、税理士へ確認しましょう。
対象者別に今すべきこと

具体的な政令日が決まっていないため、制度変更だけを理由に特定口座を解約したり、資産を一括売却したりする段階ではありません。次の順で準備してください。
| 対象者 | 今行うこと | 正式決定後に確認すること |
|---|---|---|
| 75歳以上など後期高齢者医療の加入者 | 年間取引報告書、年金収入、現行の保険料・窓口負担区分を整理 | 広域連合で施行年度の保険料と負担区分を試算 |
| 70歳から74歳 | 75歳になる時期、退職時期、NISAと課税口座の残高を確認 | 加入予定の広域連合の施行案内を確認 |
| 69歳以下や被用者保険の加入者 | 今回の直接対象ではないことを確認し、通常の資産計画を継続 | 将来の制度拡大が正式決定した場合だけ再試算 |
課税口座の資産をNISAへ直接移すことはできません。売却して買い直す場合は、利益確定、税、手数料、相場変動が生じます。NISAも元本保証ではありません。保険料対策だけを理由に、生活防衛資金を投資したり不利な価格で売却したりしないでください。
施行政令が出たら、対象となる法定調書、反映する所得年、保険料計算、窓口負担の判定時期を確認します。著しく大きな売却や確定申告の前は、市区町村、広域連合、税務署または税理士へ相談しましょう。
お住まいの地域の問い合わせ先は、厚生労働省の高齢者医療制度ページから後期高齢者医療広域連合または市区町村をご確認ください。
よくある質問

特定口座の源泉徴収ありは廃止されますか
廃止されません。損益計算、源泉徴収、申告不要を選べる税務上の仕組みは残ります。
金融所得が保険料へ反映されるのはいつからですか
具体日は未定です。法律上は2026年6月5日の公布後5年以内の政令日です。
2028年度から始まるのですか
成立法の負担反映日としては確定していません。厚労省は公布後4年から5年程度を想定していますが、後ろ倒しの可能性も示しています。
誰が直接の対象ですか
今回成立した仕組みの中心は、75歳以上などの後期高齢者医療制度の被保険者です。
国民健康保険料も同時に上がりますか
申告不要所得を国保へ同時に全国反映することまでは確定していません。ただし、現行でも申告した金融所得が国保料へ影響する場合があります。
会社員の健康保険料へ株の利益が加算されますか
今回の法律は、在職者の金融所得を毎月の被用者保険料へ直接加算する改正ではありません。
NISAの利益も対象ですか
今回の見直しでは対象外です。ただし、配当を非課税で受け取る方式などNISAの要件は確認してください。
預貯金利子や含み益も対象ですか
今回の見直しでは対象外です。資産残高や売却前の評価益そのものへ保険料を課す制度ではありません。
税率20.315%は上がりますか
今回成立した法律による変更はありません。金融所得課税の将来議論とは別です。
自分の負担増はどこで確認できますか
後期高齢者医療広域連合または市区町村へ確認します。確定申告の判断は税務署や税理士へ相談してください。
まとめ
特定口座のメリットがすべて終わるわけではありません。源泉徴収あり特定口座の税務上の利便性と現行税率20.315%は、今回の法律で廃止・変更されません。
成立したのは、後期高齢者医療制度で、申告不要を選べる一部の上場株式等の金融所得を保険料や窓口負担等へ反映する仕組みです。法律は2026年6月5日に公布されましたが、実施日は公布後5年以内の政令日です。2028年度に全国民の社会保険料が上がる制度ではありません。
- 直接の対象は後期高齢者医療制度です
- NISA口座内の非課税所得と預貯金利子は今回の対象外です
- 含み益や資産残高そのものは直接の対象ではありません
- 国保、介護保険、被用者保険へ一斉適用する改正ではありません
- 正式な政令と広域連合の案内後に個別試算してください


