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On Holding株が20%超急落した理由|2026年Q2決算・米州減速・通期見通しを検証

結論から言うと、On Holding(NYSE: ONON)の米国上場株が2026年8月11日に20%超急落した主因とみられるのは、会社が赤字になったことではありません。第2四半期の純売上高が市場予想を約3.2%下回り、売上の半分超を占める米州と、売上規模の大きい卸売チャネルの成長率が第1四半期から鈍化したことです。さらに、2026年通期の為替一定ベースの売上成長見通しが「少なくとも23%」から「20%台前半」へ弱まり、高成長を前提にしていた市場の期待との差が一気に意識されました。

ただし、決算のすべてが悪かったわけではありません。DTCと呼ばれる自社店舗・ECの売上高は為替一定ベースで34.3%増え、粗利益率は65.4%へ改善しました。純利益も黒字です。本記事では、Yahoo!ニュースのピックアップReutersの配信記事を起点に、On Holdingの2026年Q2決算リリース経営陣による決算説明資料SEC提出書類を照合しました。

本記事は2026年8月12日時点の公開情報に基づく一般的な情報提供です。特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。株価、為替、会社見通しは変動します。投資判断は最新の開示を確認し、ご自身の責任で行ってください。


On Holding株急落の要点

確認項目事実読み方
株価米国時間8月11日に20%超下落Reutersが報道した当日の市場反応
Q2純売上高8億5,030万スイスフラン前年同期比13.5%増でも市場予想を下回った
市場予想8億7,816万スイスフラン実績は約2,786万フラン、約3.2%未達
米州為替一定で13.0%増Q1の17.1%増から鈍化
卸売為替一定で12.7%増Q1の25.1%増から大きく減速
DTC為替一定で34.3%増Q1の28.7%増から加速
粗利益率65.4%前年同期の61.5%から3.9ポイント改善
通期売上見通し34.7億〜35.6億フランレンジ化し、為替一定成長率の表現は軟化

この決算を一言で表すなら、事業は成長を続けているが、市場が期待した売上成長には届かなかったとなります。増収と株価急落は矛盾しません。株価は過去の業績ではなく、事前期待との差と将来の見通しに反応するためです。

On Holdingとは何の会社か

On Holding AGは、スイス発のプレミアムスポーツウェア企業です。ランニングシューズを中心に、アパレルとアクセサリーも展開しています。Class A普通株式はニューヨーク証券取引所にONONのティッカーで上場しています。日本企業の「オンワード」などとは別会社です。

項目内容
会社名On Holding AG
本社スイス・チューリヒ
上場市場ニューヨーク証券取引所
ティッカーONON
主要商材ランニングシューズ、スポーツアパレル、アクセサリー
決算通貨スイスフラン
Q2対象期間2026年4月1日〜6月30日

会社の沿革、上場証券、競争環境などは2025年Form 20-Fで確認できます。SNSではADRと説明されることがありますが、会社開示はNYSE上場のClass A ordinary sharesと記載しています。本記事では「米国上場株」または「Class A普通株式」と表現します。

株価が20%超急落した4つの理由

Reutersによると、アナリストが予想していたQ2純売上高は8億7,816万スイスフランでした。実績は8億5,030万フランだったため、差額は約2,786万フランです。編集部計算では市場予想を約3.17%下回ります。一方、調整後1株利益は0.35フランで、予想0.34フランをわずかに上回りました。

指標実績市場予想判定
純売上高850.3百万フラン878.16百万フラン約27.86百万フラン下振れ約3.17%未達
調整後1株利益0.35フラン0.34フラン0.01フラン上振れわずかに上回る

市場が強く反応したのは、利益より売上でした。プレミアムブランドとして高成長を続ける期待が大きい企業では、利益率が良くても、成長の先行指標である売上が予想を下回ると評価が厳しくなりやすいからです。これは市場反応からの編集部の推論であり、会社が急落理由として公式認定したものではありません。

Q2の米州売上高は4億5,160万フランで、全社売上の約53.1%を占めます。為替一定ベースでは前年同期比13.0%増でしたが、Q1の17.1%増より4.1ポイント低下しました。売上の過半を占める地域の減速は、APACの高成長だけでは埋めにくいと市場が受け止めた可能性があります。

Reutersは、米国で消費者の資金余力が弱まり、大手競合が値引きを行う環境にも触れています。Onは定価販売とブランド価値を守る方針を示しており、短期的な数量拡大のために大幅値引きへ追随しない姿勢です。これは粗利益率にはプラスですが、景気が弱い局面では売上成長との両立が試されます。

Q2の卸売売上高は4億6,190万フランで、為替一定ベースの成長率は12.7%でした。Q1は25.1%増だったため、成長率は12.4ポイント低下しています。会社は、ブランドの定価販売を守り、2027年の新製品投入へ在庫環境を整えるため、卸売先への出荷を意図的に管理すると説明しています。

卸売の鈍化をすべて需要悪化と断定するのは正確ではありません。小売店への出荷時期、在庫管理、販売先の選別という会社側の判断も影響します。ただし、卸売はQ2売上の54.3%を占めるため、伸び率低下が全社売上を押し下げる影響は小さくありません。

Q1時点で会社は、2026年通期について為替一定ベースで少なくとも23%の売上成長、現在の為替レートで少なくとも35.1億フランの純売上高を見込んでいました。Q2後は、為替一定ベースの成長を20%台前半、現在の為替レートで34.7億〜35.6億フランとしました。

新レンジの中央値は35.15億フランで、Q1時点の実額下限35.1億フランとほぼ同水準です。一方、新レンジの下限は34.7億フランまで広がり、為替一定成長率の表現も弱くなっています。このため、粗利益率見通しの引き上げだけを見て「全面的な上方修正」と呼ぶのは不正確です。

急落要因確認された数字投資家が警戒しやすい点
売上未達市場予想比で約3.2%下振れ高成長期待に対する不足
米州鈍化為替一定17.1%増から13.0%増へ売上の約53%を占める最大地域
卸売鈍化為替一定25.1%増から12.7%増へQ2売上の約54%を占める
通期表現の軟化少なくとも23%から20%台前半へ将来成長への期待修正


Q2決算は本当に悪かったのか

売上未達だけを見ればネガティブですが、事業全体が縮小した決算ではありません。Q2純売上高は前年同期比13.5%増、為替一定ベースでは21.6%増です。スイスフラン高などの為替影響を受け、実際に報告される伸び率が為替一定ベースを8.1ポイント下回りました。

区分報告通貨ベース為替一定ベース
全社売上13.5%増21.6%増8.1ポイント
DTC26.0%増34.3%増8.3ポイント
卸売4.8%増12.7%増7.9ポイント
米州4.5%増13.0%増8.5ポイント
EMEA15.4%増20.5%増5.1ポイント
APAC43.1%増54.7%増11.6ポイント

為替一定ベースは、当期売上を前年の為替レートで換算し直した非IFRS指標です。事業の販売動向を比較しやすい一方、実際の連結財務諸表へ計上される金額ではありません。投資家は、事業の勢いを見る為替一定成長率と、IFRS財務諸表に計上される報告通貨ベースの実績を両方確認する必要があります。定義と調整表はQ2 MD&Aに掲載されています。

Q1とQ2を比べると何が変わったか

単一四半期の数字だけでは、急落の背景をつかみにくくなります。そこで、Q1決算リリースとQ2を同じ為替一定ベースで比較します。ここで比べるのは前年同期比の成長率であり、Q1からQ2へ売上額が何%増減したかという前四半期比ではありません。

項目Q1の前年同期比Q2の前年同期比変化
全社売上26.4%増21.6%増4.8ポイント鈍化
DTC28.7%増34.3%増5.6ポイント加速
卸売25.1%増12.7%増12.4ポイント鈍化
EMEA25.6%増20.5%増5.1ポイント鈍化
米州17.1%増13.0%増4.1ポイント鈍化
APAC61.4%増54.7%増6.7ポイント鈍化、なお高成長

この比較から、Q2の弱さはDTCではなく、主に卸売へ現れたと分かります。DTCの加速は、顧客との直接接点、価格統制、商品構成の改善に有利です。一方で、新店舗開設やEC投資にはコストがかかり、DTC比率上昇だけで将来利益が保証されるわけではありません。

チャネル別ではDTCが過去最高のQ2構成比

OnのQ2 DTC売上高は3億8,840万フランで、構成比は45.7%でした。会社はQ2として過去最高のDTC比率と説明しています。卸売売上高は4億6,190万フランで、依然として全体の54.3%です。

販売チャネルQ2売上高構成比報告通貨ベース為替一定ベース
DTC388.4百万フラン45.7%26.0%増34.3%増
卸売461.9百万フラン54.3%4.8%増12.7%増
合計850.3百万フラン100.0%13.5%増21.6%増

DTCが伸びると中間流通を通さない分、一般に粗利益率を押し上げやすくなります。ただし、今回の粗利益率改善はDTC構成比だけで説明できません。価格、商品構成、物流、為替、関税など複数要因があります。会社はQ2に米国関税上昇の影響を吸収し、想定する関税還付を数値へ含めていないと説明しています。

地域別ではAPACが54.7%増

地域別の明暗は鮮明です。米州は売上規模が最大ですが成長率は相対的に低く、APACは売上構成比が20.1%まで拡大し、為替一定で54.7%増えました。EMEAも20.5%増と堅調です。

地域Q2売上高構成比報告通貨ベース為替一定ベース
米州451.6百万フラン53.1%4.5%増13.0%増
EMEA228.2百万フラン26.8%15.4%増20.5%増
APAC170.5百万フラン20.1%43.1%増54.7%増

APACの急成長は地域分散という点で好材料です。ただし、規模の大きい米州が1ポイント減速したときの金額影響と、規模の小さい地域が1ポイント加速したときの影響は同じではありません。成長率だけでなく売上構成比も同時に見る必要があります。

製品別ではアパレルとアクセサリーが高成長

Q2売上の91.9%はシューズです。アパレルとアクセサリーは成長率こそ高いものの、合計構成比は約8.1%にとどまります。新カテゴリーの伸びは将来の選択肢を広げますが、現時点の業績は依然としてシューズ需要に大きく依存しています。

製品Q2売上高構成比報告通貨ベース為替一定ベース
シューズ781.6百万フラン91.9%10.9%増18.9%増
アパレル54.2百万フラン6.4%47.7%増56.2%増
アクセサリー14.5百万フラン1.7%88.3%増102.2%増

アパレルとアクセサリーは小さい母数からの成長である点に注意が必要です。高い伸び率だけでシューズ依存がすぐ解消すると考えるのは早計です。一方、シューズ購入者へ追加商品を販売できれば、顧客単価とブランド接点を増やす余地はあります。

利益面はむしろ強かった

Q2粗利益は5億5,570万フランで前年同期比20.6%増、粗利益率は65.4%でした。純利益は1億500万フランで、前年同期の4,090万フランの赤字から黒字へ転換しています。調整後EBITDAは1億6,810万フラン、マージンは19.8%です。

利益指標2026年Q22025年Q2変化
粗利益555.7百万フラン460.9百万フラン20.6%増
粗利益率65.4%61.5%3.9ポイント改善
純利益105.0百万フラン40.9百万フランの赤字黒字転換
純利益率12.3%5.5%の赤字17.8ポイント改善
調整後EBITDA168.1百万フラン136.1百万フラン23.5%増
調整後EBITDAマージン19.8%18.2%1.6ポイント改善

純利益はIFRS指標ですが、調整後EBITDAと調整後利益は会社独自の非IFRS指標です。株式報酬や為替差損益など一定項目を調整するため、期間比較に役立つ反面、IFRS利益の代わりにはなりません。会社リリース末尾の調整表と併せて読むことが重要です。

上期累計では24%の為替一定成長

四半期のぶれをならすため、2026年1〜6月の上期も確認します。上期純売上高は16億8,220万フラン、前年同期比14.0%増、為替一定ベースでは24.0%増でした。調整後EBITDAマージンは20.3%です。

上期指標2026年1〜6月前年同期比または比較
純売上高1,682.2百万フラン14.0%増、為替一定24.0%増
DTC売上高710.7百万フラン21.4%増、為替一定31.6%増
卸売売上高971.5百万フラン9.1%増、為替一定19.0%増
粗利益率64.8%前年同期60.7%
純利益208.3百万フラン前年同期15.8百万フラン
調整後EBITDA342.3百万フランマージン20.3%

上期ベースでは会社がQ2後に示した「20%台前半」の通期成長目安を上回る24.0%です。ただし、上期の実績だけで通期達成を保証することはできません。下期は比較対象となる前年実績、卸売の出荷管理、為替、関税、消費環境が変わります。


通期見通しは売上と利益率で方向が違う

Q2決算後の見通しは、売上成長について慎重さが増す一方、粗利益率は引き上げられました。調整後EBITDAマージンは据え置きです。売上の伸びがやや弱くても、値引きを抑え、DTC構成比や商品構成を改善して収益性を守る戦略と読めます。

2026年通期指標Q1後の見通しQ2後の見通し評価
為替一定売上成長少なくとも23%20%台前半表現は軟化
純売上高実額少なくとも35.1億フラン34.7億〜35.6億フラン下限低下、上限追加
粗利益率少なくとも64.5%少なくとも65.0%0.5ポイント引き上げ
調整後EBITDAマージン19.5〜20.0%19.5〜20.0%据え置き

新しい売上レンジの中央値は35.15億フランです。しかし、中央値だけで「実質上方修正」と判断すると、34.7億フランまでの下振れ余地と為替一定成長率の表現軟化を見落とします。逆に「全面的な下方修正」とだけ書くと、35.6億フランの上限と粗利益率引き上げを無視します。両面を確認するのが適切です。

なお、Q1後の35.1億フラン以上とQ2後の34.7億〜35.6億フランは、それぞれの公表時点の為替レートを前提にした実額です。公表日が異なるため、レンジの変化には事業見通しだけでなく為替前提の差も含まれます。事業の見方を比べる場合は、実額だけでなく為替一定ベースの成長率も併せて確認してください。

現金と在庫から分かること

2026年6月末の現金及び現金同等物は12億560万フランで、2025年12月末から約18.2%増えました。在庫は4億7,290万フランで、同期間に約12.6%増えています。売上規模の拡大や新商品準備に伴う在庫増は自然な面もあり、増加だけで過剰在庫とは断定できません。

貸借対照表項目2026年6月末2025年12月末編集部計算
現金及び現金同等物1,205.6百万フラン1,019.9百万フラン約18.2%増
在庫472.9百万フラン419.8百万フラン約12.6%増

今後は在庫の金額だけでなく、在庫回転、値引き率、卸売先の在庫、旧商品の消化状況を確認したいところです。会社が掲げるフルプライス販売と在庫の健全性が両立すればブランド価値を守れます。反対に、在庫増が売上成長を上回り続けて値引きへつながれば、粗利益率の持続性に疑問が生じます。

強材料とリスクを分けて整理

観点強材料リスクまたは未確認点
成長為替一定でQ2売上21.6%増全社、米州、卸売の成長率はQ1から鈍化
販売網DTCが34.3%増、構成比45.7%卸売が売上の過半を占める
地域APACが54.7%増米州が売上の53.1%
製品アパレルとアクセサリーが高成長シューズが売上の91.9%
収益性粗利益率65.4%、通期目標も引き上げ関税、為替、値引き競争の影響は継続
財務現金残高が増加在庫の健全性は継続確認が必要
株価急落で期待値が一部調整された可能性適正価格や反発時期は決算だけでは決められない

スポーツ用品企業では、商品力だけでなく、定価販売率、卸売パートナーの在庫、地域構成、ブランド投資が重要です。同業を見る別の切り口として、アシックスの自社株買いと株主還元の解説も参考になります。ただし、上場市場、会計通貨、事業構成が異なるため、単純比較はできません。

急落後に投資家が確認したい7項目

20%を超える下落を見ると、すぐに買い場か、成長終了かを決めたくなります。しかし、一日の値動きだけではどちらも判断できません。次の開示で仮説を更新する方が再現性があります。

確認項目現在地次回見るポイント
米州の為替一定成長率Q2は13.0%再加速するか、さらに鈍化するか
卸売の為替一定成長率Q2は12.7%出荷管理の影響と実需を切り分ける
DTC構成比45.7%高成長と採算を両立できるか
粗利益率Q2は65.4%関税を吸収し65%以上を維持できるか
在庫半年で約12.6%増売上成長とのバランスと値引きの有無
通期売上レンジ34.7億〜35.6億フラン下限・上限のどちらへ進むか
為替影響Q2成長率差は8.1ポイントスイスフラン換算後の実額への影響

決算急落では、事前期待の高さと事業悪化を分ける必要があります。別事例としてキオクシアが決算後に急落した理由も、期待と実績の差を考える材料になります。

また、急落時に時間軸を崩しやすい方は長期投資で失敗する人の共通点も併せて確認してください。

On Holding株は今買いなのか

本決算だけで「買い」または「売り」と断定することはできません。急落により価格は下がりましたが、価格が下がったことと割安になったことは同義ではありません。適正価値を考えるには、将来売上、利益率、投資額、資本コスト、為替、株式数などを置いた評価が必要です。

強気の見方では、DTC、APAC、粗利益率、現金残高が支えになります。慎重な見方では、最大市場の米州、卸売、通期成長表現、シューズ依存が焦点です。最も避けたいのは、20%下がったから必ず戻る、または20%下がったから成長が終わった、と一方向へ決めつけることです。


決算を誤読しないための5つの注意点

増収と市場予想未達は同時に起こる

前年同期との比較と市場予想との比較は、基準が異なります。Q2売上高850.3百万フランは前年同期の749.2百万フランを上回っているため、会社の事業は増収です。しかし、市場は発表前に878.16百万フラン程度を予想していました。その予想より低ければ、前年より成長していても株価には失望材料となり得ます。

ここで重要なのは、未達率約3.17%の大小だけではありません。市場が何年先まで高成長を織り込んでいたか、未達が一時的な出荷時期のずれか、需要の構造変化かによって反応は変わります。今回の開示だけでは、米州の鈍化が一時的か長期化するかは確定していません。次の四半期で同じ指標を追う必要があります。

前年同期比と前四半期比を混同しない

本記事でQ1の17.1%とQ2の13.0%を比較するとき、米州売上がQ1からQ2へ4.1%減ったという意味ではありません。それぞれが前年の同じ四半期に対して何%伸びたかを比べています。正しくは「前年同期比の成長率が4.1ポイント鈍化した」です。

季節性のあるスポーツ用品では、四半期の売上額をそのまま前期と比較すると誤解する場合があります。会社が示した前年同期比と為替一定ベースを主軸にし、必要に応じて季節性や商品発売時期を加味するのが安全です。

為替一定成長率だけで利益は決まらない

為替一定ベース21.6%増は、ブランドの販売活動を理解するうえで有用です。しかし、Onはスイスフランで連結決算を作るため、為替変動後の13.5%増が報告売上の伸びです。仕入れ、生産、物流、販売、費用の通貨構成は同じではなく、売上の換算差だけから利益への影響を一対一で計算することはできません。

そのため「為替がなければすべて順調だった」と結論づけるのも、「報告通貨の伸びが低いから実需が弱い」と結論づけるのも極端です。事業の数量・価格を見る為替一定指標と、財務諸表へ反映される報告指標を役割分担させて読みます。

粗利益率と最終利益には別の要因が入る

粗利益率は売上高から売上原価を差し引いた段階の収益性です。そこから販売費、一般管理費、株式報酬、減価償却、金融損益、税金などを経て純利益になります。粗利益率が上がったから、純利益率が常に同じ幅で上がるわけではありません。

調整後EBITDAは経営の基礎的な収益力を比較する補助指標ですが、株式報酬などを除外します。投資家にとって実際の持分希薄化や現金の動きを無視してよいわけではありません。IFRS純利益、営業キャッシュフロー、調整後指標をセットで確認する必要があります。

急落率だけで企業価値は測れない

20%超の下落は大きな市場反応ですが、その一日で企業の店舗、商品、現金が20%失われたことを意味しません。一方で、急落が単なるノイズとも限りません。将来の売上成長率を低く見積もれば、評価モデル上の企業価値は大きく変わり得ます。

投資判断では、下落前の株価を「戻るべき基準」にしないことが重要です。過去の高値や自分の取得価格は、将来キャッシュフローの根拠ではありません。会社の最新見通しと自分が置く前提から評価し直し、その前提が崩れたときの損失も先に考えます。

よくある誤読正しい整理
売上未達だから減収前年同期比は増収だが市場予想には未達
米州が4.1%減収前年同期比成長率が4.1ポイント鈍化
為替一定21.6%が会計上の売上成長会計上の報告通貨ベースは13.5%増
粗利益率上昇なら全指標が改善販管費、金融損益、税金などは別途影響
20%下落したから20%割安適正価値は将来前提によって変わる


今後を3つのシナリオで考える

将来を一点で予想する代わりに、確認可能な条件を置くと決算を追いやすくなります。以下は会社予想ではなく、公開された指標から編集部が整理した監視シナリオです。発生確率や目標株価を示すものではありません。

シナリオ確認できる条件事業への示唆注意点
回復米州と卸売が再加速し、粗利益率65%以上を維持売上成長とブランド価値保護の両立為替次第で報告売上は弱く見える可能性
会社レンジ内通期売上34.7億〜35.6億フラン、利益率目標を達成成長率は落ち着くが収益性を維持市場期待がレンジ上限なら達成しても反応は不明
下振れ米州・卸売がさらに鈍化し、在庫や値引きが増える成長と粗利益率の両方へ圧力一時要因か構造要因かの判定が必要

回復シナリオでは、DTCの高成長を維持しながら卸売の出荷管理が正常化することが鍵です。会社レンジ内のシナリオでは、売上の絶対額だけでなく、65%以上の粗利益率と19.5〜20.0%の調整後EBITDAマージンを同時達成できるかを見ます。下振れシナリオでは、在庫増と値引きが連鎖していないかが重要です。

日本の投資家が追加で負う3つの変動

日本からONONへ投資する場合、会社業績と米国市場の株価に加えて、円と米ドルの為替変動も受けます。会社の決算通貨はスイスフランですが、株式は米ドルで取引され、日本の口座では円換算評価されることが一般的です。この三つの通貨を混同しないことが大切です。

変動要因どこへ影響するか確認方法
事業通貨とスイスフラン会社の報告売上・利益報告通貨と為替一定ベースを比較
ONONの米ドル株価米国市場での評価額決算、見通し、バリュエーションを確認
米ドルと円日本円へ換算した損益取得時と売却時の為替レートを確認
取引コスト手取りリターン売買手数料と為替手数料を証券会社で確認
税制配当・譲渡益の手取り口座区分と最新制度を公式情報で確認

たとえばONONの米ドル株価が上がっても、同じ期間に円高が進めば円換算リターンは小さくなる場合があります。反対もあります。税務やNISAの取扱いは個別事情と制度変更の影響を受けるため、本記事では一律の結論を示しません。利用する証券会社と税務当局の最新案内を確認してください。

情報の確度と更新ルール

決算記事では、発表直後の速報、会社が公表した実績、会社による将来予想、編集部の計算・推論が混在しがちです。本記事は、実績と会社見通しをOnの決算資料とSEC提出書類で確認し、株価下落率と市場予想はReuters報道に帰属させました。市場予想との差率、地域・製品構成比、残高増減率は公表された表示数値から再計算しています。

情報区分本記事での扱い主な出典
確定実績会社公表値として記載Q2リリース、MD&A、Form 6-K
会社見通し予想であり保証ではないと区別Q1・Q2リリース
市場予想Reutersが伝えたアナリスト予想Reuters配信記事
株価反応米国時間8月11日の20%超下落Reuters配信記事
再計算計算方法と丸めを明記公表数値から編集部計算
将来解釈推論またはシナリオと明記複数指標を基にした編集部整理

記事の基準日は2026年8月12日です。会社が見通しを修正した場合、または次四半期を発表した場合、本記事の将来部分は古くなります。公開前の人間による確認では、On公式IRの最新リリース、SECの最新提出書類、当日の株価と為替を再確認する必要があります。


よくある質問

On Holding株はなぜ20%超も下がったのですか

Q2純売上高が市場予想を約3.2%下回り、最大市場の米州と卸売の成長率がQ1から鈍化したためです。通期の為替一定売上成長の表現が弱くなったことも、将来期待の見直しにつながったと考えられます。

On HoldingのQ2決算は赤字だったのですか

いいえ。Q2の純利益は1億500万スイスフランで黒字でした。前年同期は4,090万フランの赤字だったため、利益面は改善しています。

売上高は減少したのですか

減少していません。Q2純売上高は前年同期比13.5%増、為替一定ベースで21.6%増です。ただし、市場予想の8億7,816万フランには届きませんでした。

市場予想をどのくらい下回りましたか

実績850.3百万フランに対し、Reutersが伝えた予想は878.16百万フランです。表示数値からの編集部計算では、差額27.86百万フラン、約3.17%の未達です。

米州の売上は減ったのですか

売上額は前年同期比で増えています。報告通貨ベースで4.5%増、為替一定ベースで13.0%増です。問題視されたのは減収ではなく、為替一定成長率がQ1の17.1%から鈍化した点です。

DTCとは何ですか

Direct-to-Consumerの略で、自社店舗や自社ECなどを通じて消費者へ直接販売するチャネルです。Q2のDTC売上は為替一定ベースで34.3%増え、構成比は45.7%でした。

卸売の成長鈍化は需要悪化だけが原因ですか

そうとは断定できません。会社は、定価販売とブランド価値を守り、2027年の新商品投入へ健全な環境を整えるため、卸売先への出荷を意図的に管理すると説明しています。消費環境と会社の出荷判断の両方を見る必要があります。

為替一定ベースとは何ですか

当期売上を前年の為替レートで換算し、為替変動の影響を除いて事業の伸びを比較する非IFRS指標です。実際に報告されるスイスフラン建て売上とは異なるため、両方を確認します。

通期予想は上方修正されたのですか

一括して上方修正とはいえません。粗利益率見通しは少なくとも64.5%から65.0%へ引き上げられました。一方、為替一定売上成長は少なくとも23%から20%台前半へ表現が弱まり、売上実額は34.7億〜35.6億フランのレンジになりました。

粗利益率が改善したのになぜ株価は下がったのですか

株価は複数の指標と将来期待を同時に織り込みます。今回は粗利益率改善よりも、売上未達と米州・卸売の減速が重く評価されたとみられます。これは市場反応からの推論であり、単一原因を証明するものではありません。

On Holdingは米国企業ですか

本社はスイスにあります。Class A普通株式をニューヨーク証券取引所へ上場しているため、米国市場でONONとして取引されます。

On Holding株は日本から買えますか

取扱いのある証券会社では米国株として売買できる場合があります。取扱銘柄、注文方法、為替手数料、売買手数料、NISA対象可否は証券会社と時期で異なるため、最新の公式案内を確認してください。

20%超下落した今は買い時ですか

下落率だけでは判断できません。米州と卸売が再加速するか、粗利益率65%以上を維持できるか、在庫が健全か、通期レンジのどこへ着地するかを確認し、ご自身の許容損失と投資期間に照らす必要があります。

次の決算で最も重要な数字は何ですか

米州と卸売の為替一定成長率、DTC構成比、粗利益率、在庫、通期売上レンジです。次回発表日は変更されることがあるため、On Holding公式IRの四半期決算ページで確認してください。


まとめ

On Holding株の20%超急落は、業績が縮小したからではなく、高い成長期待に対してQ2売上が市場予想へ届かず、最大市場の米州と卸売の成長率が鈍化したことが中心です。通期見通しも、売上成長には慎重さが増す一方、粗利益率は引き上げられました。

  • Q2売上高は850.3百万フランで、予想を約3.2%下回った
  • 米州は為替一定13.0%増、卸売は12.7%増へ鈍化した
  • DTCは34.3%増、APACは54.7%増と強い
  • 粗利益率は65.4%、純利益は105.0百万フランで黒字だった
  • 通期売上見通しはレンジ化し、粗利益率見通しは65.0%以上へ上がった

したがって、今回の決算は「全面的な悪化」でも「問題のない好決算」でもありません。売上成長の減速と収益性改善が同時に起きた混合決算です。急落後の判断では、株価の反発を予想するより、次の開示で米州、卸売、粗利益率、在庫がどう動くかを追う方が重要です。

参照した一次情報・報道

数値は各資料の表示桁を使用しています。構成比、市場予想との差率、残高増減率は編集部計算のため、丸めにより会社開示値とわずかな差が生じる場合があります。記事公開前に、最新の株価と会社開示を人間が再確認してください。

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