金融

持ち家は資産という幻想 最悪売ればいいが通用しない日本不動産の現実

第1章 持ち家は資産という考え方が広まった背景

持ち家は資産であり、最悪売ればいいという考え方は、日本では長い間当たり前のように語られてきました。
住宅を購入することは将来の安心につながり、家賃を払い続けるよりも得だと信じられてきたのです。
しかし、この認識は現在の日本の不動産市場の実態とは大きく乖離しています。

この考え方が広まった最大の理由は、過去の成功体験にあります。
高度経済成長期からバブル期にかけて、日本では人口が増え続け、都市部を中心に土地価格と住宅価格が右肩上がりで上昇していました。
この時代に住宅を購入した人の多くは、住みながら資産価値が上がり、売却すれば購入価格以上で現金化できたのです。

この成功体験が世代を超えて語り継がれ、持ち家は資産であるというイメージが定着しました。
親世代が実際に不動産で利益を得た経験を持っている場合、その価値観は疑われることなく次の世代へ引き継がれます。
その結果、現在の市場環境を十分に検討しないまま、過去と同じ感覚で住宅購入を判断する人が少なくありません。

しかし、当時と今とでは前提条件が大きく異なります。
人口構成は変化し、少子高齢化と人口減少が進み、住宅の供給量は需要を上回っています。
かつてのように持っているだけで値上がりする市場ではなく、時間の経過とともに価値が下がる市場へと完全に移行しています。

それにもかかわらず、「最悪売ればいい」という言葉だけが独り歩きしている点が問題です。
この言葉は、売却できること、そして売却時に十分な資金が手元に残ることを暗黙の前提としています。
しかし、その前提が崩れているにもかかわらず、多くの人が深く考えないまま住宅ローンという長期の負債を背負っているのが現実です。

持ち家を資産と考える発想そのものが、現代の日本ではすでに検証が必要な段階に入っています。
これからの時代において重要なのは、過去の成功事例ではなく、現在進行形の市場構造と将来の人口動態を正しく理解することです。
次章では、日本の住宅がどのようなスピードで価値を失っていくのか、その現実を具体的に見ていきます。


第2章 日本の住宅は想像以上のスピードで価値を失う

持ち家は資産だと考えられてきた最大の理由は、住宅には価値が残り続けるという思い込みです。
しかし、日本の不動産市場では、この前提が事実として成り立っていません。
住宅の価値は、購入した瞬間から急速に下落していきます。

日本の住宅市場では、建物の価値と土地の価値が明確に分けて評価されます。
問題となるのは建物部分です。
特に木造住宅は、法定耐用年数が22年と定められており、市場評価もこの考え方に強く影響を受けています。
その結果、築年数が進むにつれて建物の価値は急激に目減りします。

具体的には、新築から10年を超えた段階で新築時の価格を維持することはほぼありません。
築15年前後で明確な価格下落が始まり、築30年を超える頃には、建物としての評価はほぼゼロになります。
この時点での取引は、住宅ではなく「古家付き土地」として扱われるのが一般的です。

ここで重要なのは、住宅が物理的に住める状態かどうかと、市場で価値が認められるかどうかは別問題だという点です。
実際には問題なく住める住宅であっても、市場評価としては価値がないと判断されるケースが珍しくありません。
資産として期待されていた部分が、評価上は消失してしまうのです。

また、価格下落は緩やかに進むのではなく、ある築年数を境に段階的に起こります。
築20年台後半から30年を超えたあたりで、買い手の選択肢から外れやすくなり、売却価格が大きく下がる傾向があります。
この段階で初めて売却を検討しても、想定していた金額での売却は極めて困難になります。

多くの人は、土地があるから価値は残ると考えます。しかし、その土地自体に需要がなければ価格は維持されません。
特に郊外や地方では、土地価格そのものが下落傾向にあり、建物価値がゼロになった後は、資産価値全体が大きく毀損します。

持ち家は時間が経てば資産になるどころか、価値が減っていく性質を持つものです。
この現実を理解せずに購入すると、売却時に大きなギャップに直面します。
次章では、この価値下落が住宅ローンと組み合わさることで発生する、より深刻な問題について解説します。


第3章 売りたくても売れないオーバーローンの現実

住宅は最悪売ればいいと考える人が見落としがちなのが、住宅ローンと資産価値の関係です。
多くの場合、問題になるのはオーバーローンと呼ばれる状態です。
これは、住宅を売却してもローン残高を完済できない状況を指します。

住宅購入時、多くの人は長期間のローンを組みます。
返済期間は35年前後が一般的で、購入初期は利息の割合が大きく、元金はなかなか減りません。
一方で、住宅の資産価値は購入直後から下落していきます。
この二つの動きが重なることで、売却価格よりもローン残高の方が多い状態が発生します。

この状態になると、住宅は簡単には売却できません。
住宅ローンには抵当権が設定されており、売却時には原則としてローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。
売却代金だけで完済できない場合、不足分を自己資金で補填しなければならないのです。

しかし、数百万円単位の不足をすぐに用意できる人は多くありません。
その結果、売りたいのに売れない状態に陥ります。
転勤や離婚、収入減少といった人生の変化が起きた場合でも、住宅だけが足かせとなり、身動きが取れなくなるケースは珍しくありません。

オーバーローンを解消するための手段はいくつか存在しますが、いずれも簡単ではありません。
自己資金で補填できない場合、追加で借入を行う必要がありますが、無担保ローンは金利が高く、家計への負担は一層重くなります。
任意売却という方法もありますが、信用情報への影響を避けることはできません。

問題なのは、住宅購入時にこのリスクが十分に説明されないまま、将来の売却を前提に判断してしまう点です。
売れるかどうかではなく、売却時にローンが残らないかどうかを考えなければ、持ち家は資産ではなく負債になります。

住宅の価値下落とローン残高の関係を理解していないと、想定外の選択を迫られます。
次章では、特に地方や郊外において、この問題がさらに深刻化する理由について解説します。


第4章 地方の持ち家が資産にならない決定的な理由

持ち家は資産だという考え方が最も通用しなくなるのが、地方や郊外の不動産です。
都市部と同じ感覚で地方の住宅を捉えると、現実とのギャップに直面することになります。

不動産の価値は、建物の状態よりも需要の有無によって決まります。
地方では人口減少と高齢化が急速に進み、住宅を必要とする世帯そのものが減少しています。
新たに住みたい人がいなければ、どれだけ状態の良い住宅であっても買い手は現れません。

この結果、地方では売却という選択肢が事実上存在しないケースが増えています。
価格を下げても反応がなく、最終的には無償でも引き取り手が見つからない状況に陥ることがあります。
この段階で住宅は資産ではなく、維持費だけがかかる負担へと変わります。

また、地方では不動産市場そのものが十分に機能していない点も問題です。
流通量が少なく、査定価格が実態を反映しにくい地域も多く存在します。
売却活動を始めても長期間買い手が見つからず、その間も固定資産税や管理費用は発生し続けます。

空き家問題が深刻化している背景には、この構造があります。
相続によって取得した住宅を売ろうとしても、立地条件や地域需要の低下により手放せないケースが増えています。
結果として、使われない住宅が放置され、管理負担だけが次の世代に引き継がれていきます。

地方の持ち家は、購入時点では問題なく暮らせる住居であっても、将来的に現金化できる保証はありません。
売れる前提で資産と考えること自体が、すでに成り立たなくなっています。
次章では、仮に売却できた場合でも直面する、見落とされがちなコストと税金の現実について解説します。


第5章 売却できても手元に残るお金は想像以上に少ない

仮に持ち家を売却できたとしても、売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。
この点を理解していないと、資産だと思っていた住宅が実際には大きな損失を生む原因になります。

不動産の売却には、必ず仲介手数料が発生します。
一般的には売却価格の約3パーセントに加え、定額の費用と消費税が上乗せされます。
数千万円で売却した場合、百万円単位の費用が差し引かれることになります。
これだけでも、想定していた手取り額との差は大きくなります。

さらに見落とされがちなのが税金です。
売却によって利益が出た場合、譲渡所得として課税されます。
所有期間が短い場合は税率が高く、長期間保有していたとしても、一定の税負担は避けられません。
住宅を長く持っていたからといって、必ずしも税金が軽くなるわけではないのです。

加えて、売却に伴う諸費用も発生します。
印紙税や登記関連の費用、場合によっては測量費用が必要になります。
築年数が古い住宅では、解体費用が求められることもあり、この負担は数十万円から数百万円に及ぶことがあります。

重要なのは、これまで支払ってきた固定資産税や修繕費、管理費といった維持コストは、売却時に回収できないという点です。
長年住み続けた結果、住宅に多額の費用をかけていても、それが売却価格に反映されるとは限りません。

このように、売却価格から差し引かれる費用を考慮すると、手元に残る金額は当初の期待を大きく下回ります。
持ち家を資産と考えるのであれば、売却時の実質的な手取りまで含めて判断しなければなりません。
次章では、こうした状況にさらに拍車をかける人口減少という構造的な問題について解説します。


第6章 人口減少が不動産価格に与える避けられない影響

日本の不動産市場を考える上で、人口動態の変化は避けて通れません。
持ち家を資産と考える発想が幻想になりつつある最大の要因は、人口減少という構造的な問題にあります。

住宅価格は、需要と供給のバランスによって決まります。
人口が増え、世帯数が増加していた時代には、住宅需要は自然に拡大しました。
しかし現在の日本では、人口は減少局面に入り、世帯数も将来的に減少することが確実視されています。
この環境下では、住宅が余る方向に進むのは必然です。

特に影響が大きいのは地方です。
若年層が都市部へ流出し、高齢者だけが残る地域では、新たな住宅需要が生まれません。
結果として、既存の住宅は買い手を失い、価格下落が常態化します。
一度下がった価格が回復する見込みは低く、長期的には下落基調が続きます。

都市部であっても、無関係ではありません。
人口減少が進む中で住宅供給が続けば、立地や条件の悪い物件から需要が失われます。
駅から遠い、利便性が低い、築年数が古いといった要素を持つ住宅は、選ばれにくくなります。

さらに、人口減少は金融環境にも影響を与えます。
将来的な需要縮小が見込まれる市場では、不動産価格の上昇を前提とした投資は成立しません。
住宅は住むための場所としての価値はあっても、資産としての成長は期待しにくい状況にあります。

このように、人口減少は一時的な問題ではなく、長期間続く前提条件です。
持ち家を資産と捉えるのであれば、この流れを無視することはできません。
次章では、同じ住宅でも特に売却が難しいとされる戸建て住宅の特徴について詳しく解説します。


第7章 戸建て住宅が特に売りにくい構造的な理由

持ち家の中でも、特に資産として成立しにくいのが戸建て住宅です。
マンションと同じ不動産であっても、売却のしやすさや価値の残り方には大きな違いがあります。

戸建て住宅は、建物の価値減少が早い傾向にあります。
木造住宅が多く、築年数の経過とともに評価が急速に下がります。
築40年を超えると、実質的には建物としての価値が認められず、土地のみの評価になるケースが一般的です。

また、戸建ては個別性が非常に高い点も不利に働きます。
間取りや設備、メンテナンス状況が物件ごとに異なるため、買い手にとって比較しづらいのです。
マンションのように同一条件の物件が並ぶ市場と違い、評価基準が曖昧になりやすく、売却価格が伸びにくくなります。

立地条件への依存度が高いことも特徴です。
駅からの距離や周辺環境、生活利便性の差がそのまま価格に反映されます。
一度立地評価が下がると、建物を改修しても市場価値を回復させることは困難です。

さらに、戸建ては維持管理の責任がすべて所有者にあります。
屋根や外壁、設備の修繕を怠ると、見た目だけでなく評価にも大きく影響します。
しかし、修繕にかけた費用がそのまま売却価格に反映されるわけではありません。

このような条件が重なり、戸建て住宅は時間が経つほど売却のハードルが高くなります。
購入時には快適な住まいであっても、資産としては流動性が低い存在になりやすいのです。
次章では、売れないまま所有し続けた場合に発生する、見えにくいコストについて解説します。


第8章 売れなくても支出は止まらない持ち家の維持コスト

持ち家は一度購入すれば支払いが終わると考えられがちですが、実際には所有している限り継続的な支出が発生します。
売却できない状態になった場合、この負担は想像以上に重くなります。

まず避けられないのが固定資産税です。
住宅の使用状況にかかわらず、所有しているだけで毎年課税されます。
金額は立地や評価額によって異なりますが、長期間保有すれば総額は決して小さくありません。

次に修繕費があります。住宅は時間とともに劣化し、屋根や外壁、給排水設備などの定期的な補修が必要になります。
これらの修繕を怠ると住環境が悪化するだけでなく、売却時の評価もさらに下がります。
しかし、修繕にかけた費用が資産価値として回収できる保証はありません。

空き家になった場合でも費用は発生します。
最低限の換気や通水、草刈りなどの管理が必要であり、管理を怠ると近隣トラブルや行政指導の対象になります。
状況によっては、固定資産税の軽減措置が解除され、税負担が大きく増える可能性もあります。

さらに、火災保険や地震保険といった保険料も継続的な支出です。
万一に備えるためには加入を続ける必要がありますが、これも所有者の負担となります。

このように、持ち家は売れない状態であってもコストが積み重なります。
資産として期待していた住宅が、時間とともに家計を圧迫する存在に変わることも珍しくありません。
次章では、これまでの内容を踏まえ、持ち家をどのように捉えるべきかを整理します。


第9章 持ち家を資産と考えないための現実的な判断軸

ここまで見てきたように、持ち家は最悪売ればいいという前提で考えると、現実とのズレが大きくなります。
これから住宅購入を検討するのであれば、資産としての期待を持ちすぎない視点が不可欠です。

まず重要なのは、長期的に住み続けられるかどうかです。
売却を前提にするのではなく、その場所で生活を完結できるか、将来の家族構成や働き方の変化に対応できるかを冷静に考える必要があります。
住み替えが前提になる場合、持ち家は柔軟性を失う要因になりやすいからです。

次に立地の将来性です。現在の利便性だけでなく、人口動態や地域の衰退リスクを含めて判断することが求められます。
駅からの距離、医療や商業施設へのアクセス、地域全体の人口推移などは、将来の売却可能性に直結します。

住宅ローンについても慎重な設計が必要です。
借りられる金額ではなく、無理なく返し続けられる金額で考えることが重要です。
価値下落を前提に、売却時にローンが残らない可能性を想定しておくことで、将来のリスクを抑えられます。

また、住宅を金融資産と同じように扱わない意識も大切です。
不動産は流動性が低く、必要なときにすぐ現金化できるものではありません。
資産形成を目的とするのであれば、住宅とは別に流動性の高い資産を持つことが現実的です。

持ち家は生活の基盤としての価値はありますが、必ずしも資産として機能するとは限りません。
この前提を受け入れた上で購入を判断することが、後悔を避けるための重要な視点になります。


最終章 持ち家は資産という幻想とどう向き合うか

持ち家は資産であり、最悪売ればいいという考え方は、日本の不動産市場の現実を十分に反映したものではありません。
住宅は時間とともに価値が下がり、売却には多くの制約とコストが伴います。
人口減少が進む中で、その傾向は今後さらに強まる可能性があります。

特に問題なのは、売却できるという前提で住宅ローンを組んでしまうことです。
価値下落とローン残高のズレによって、売りたくても売れない状況に陥るリスクは決して低くありません。
地方や郊外、戸建て住宅では、そのリスクがより顕在化しやすくなります。

一方で、持ち家そのものを否定する必要はありません。重要なのは、資産として期待しすぎないことです。
住宅は住むための場所であり、生活の安定や満足度を得るための存在です。その価値は価格だけで測れるものではありません。

これから住宅購入を検討する人は、売却益を期待するのではなく、住み続けられるか、支払いを続けられるかという視点を最優先に考える必要があります。
将来の変化を想定し、柔軟性を失わない選択をすることが、結果的にリスクを最小限に抑えることにつながります。

持ち家は確実に現金化できる資産ではありません。
この現実を理解した上で選択することが、住宅購入における最大の防衛策です。

ただ・・・
まだまだお金の知識についてお伝えしたいことがたくさんあります。

ずんのInstagramでは、

  • 資産1000万までのノウハウ
  • 申請したらもらえるお金
  • 高配当株など普段は表に出ない投資情報

などを中心に、
今回お伝えできなかった金融ノウハウ
余すことなくお伝えしています。

まずはInstagramをフォローしていただき、
ぜひ期間限定の資産運用ノウハウをお受け取りください!

無料特典なので、早期に配布を終了することがあります。

-金融