
「NISA貧乏」は、NISAの年間投資枠360万円を使い切ることを目標に、生活費を極端に削って投資へ回す状態を指す言葉です。2026年8月28日にABEMA TIMESが名古屋の「あつまれNISA貧乏バー」を取材し、収入20万円のうち11万円を投資に回す参加者や、満額を埋めるために交際相手と別れた主催者の話が紹介されました。
ただし、この生活が投資家の標準ではありません。金融庁が2026年7月3日に公表したNISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)で、2025年中に300万円超360万円以下を使った口座は163万8,944口座、全体の5.7%でした。同じ集計で、1年間に一度も買付がなかった0円の口座は1,044万6,488口座、36.6%あります。
本記事では、参照ニュースの論点を出発点に、金融庁、総務省、国税庁、J-FLECの一次資料から「満額を埋めている人はどれくらいいるのか」「月30万円は家計にとってどれだけ重いのか」「急いで埋める必要があるのか」を事実ベースで検証します。数値は2026年8月28日時点で確認できたものです。
| 確認項目 | 結論 | 注意点 |
|---|---|---|
| 年間投資枠360万円を使い切った口座の割合 | 5.7% | 2025年1月から12月の利用状況、分母は2,855万8,925口座 |
| 1年間の買付が0円だった口座の割合 | 36.6% | 口座はあるが2025年中に買っていない口座 |
| 1口座あたりの年間買付額 | 約66万円 | 年間投資枠360万円の18.5%にあたる |
| 満額360万円を月割りした金額 | 月30万円 | 二人以上勤労者世帯の1か月の黒字18万6,111円を上回る |
| 生涯の非課税保有限度額 | 1,800万円 | 非課税保有期間は無期限、制度は恒久化されている |
報道で語られた「NISA貧乏」の中身

参照した記事はABEMA TIMESの2026年8月28日配信記事で、Yahoo!ニュースにも同時配信されています。番組では、年間360万円の枠を埋めることを目的化した人たちの生活が紹介され、経済愛好家の肉乃小路ニクヨ氏が「非常に危なっかしい」と指摘しました。
ここで重要なのは、番組が「投資をやめるべきだ」と述べたわけではない点です。問題視されたのは、余裕資金がない状態で枠の消化を優先する順序です。以下は報道された論点と、公的データで確認できる事実の対応関係です。
| 報道で語られた内容 | 公的データで確認できること |
|---|---|
| 年間360万円を満額埋めることを目標にしている | 360万円はつみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計で、制度上の上限であって推奨額ではない |
| 収入20万円のうち11万円を投資に回す | 残り9万円は単身世帯の平均消費支出17万3,042円の52.0%にとどまる |
| 収入の7割を投資に回す | 二人以上勤労者世帯の平均消費性向は65.0%で、収入の大半は生活費に充てられている |
| 食費を削り、預貯金より投資額が多い | 単身世帯の30.1%は金融資産を保有しておらず、緊急時の現金が乏しい家計は珍しくない |
| 満額を埋めるため交際相手と別れた | 枠を使わなかった年があっても、生涯の非課税保有限度額1,800万円は消えない |
年間360万円を使い切っている口座は5.7%
金融庁の調査には、2025年1月1日から12月31日までに各口座がいくら投資枠を使ったかの分布が載っています。合計2,855万8,925口座のうち、満額に近い300万円超360万円以下の帯は163万8,944口座でした。
| 2025年中の投資枠利用額 | 口座数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 0円 | 1,044万6,488口座 | 36.6% |
| 0円超60万円以下 | 1,010万5,117口座 | 35.4% |
| 60万円超120万円以下 | 239万1,424口座 | 8.4% |
| 120万円超180万円以下 | 105万3,151口座 | 3.7% |
| 180万円超240万円以下 | 202万1,609口座 | 7.1% |
| 240万円超300万円以下 | 90万2,192口座 | 3.2% |
| 300万円超360万円以下 | 163万8,944口座 | 5.7% |
0円と60万円以下を合わせると72.0%です。つまり口座を持つ人の7割強は、年間60万円以下しか使っていません。月額に直すと5万円以下です。「みんな満額を埋めている」という前提は、この分布と一致しません。
年代別に見ると、満額付近の帯は40歳代と50歳代でやや高く、20歳代では2.1%にとどまります。報道で取り上げられた収入20万円の層に近い若年層ほど、満額を埋めている割合は低いことになります。
| 年代 | 300万円超360万円以下の割合 | 0円の割合 | 成長投資枠を200万円超240万円以下まで使った割合 |
|---|---|---|---|
| 10歳代 | 1.5% | 56.0% | 4.4% |
| 20歳代 | 2.1% | 35.7% | 4.3% |
| 30歳代 | 6.1% | 29.0% | 10.3% |
| 40歳代 | 7.5% | 30.6% | 13.0% |
| 50歳代 | 7.6% | 31.7% | 14.7% |
| 60歳代 | 7.1% | 35.4% | 18.1% |
| 70歳代 | 3.3% | 50.1% | 17.1% |
| 80歳代以上 | 1.2% | 73.5% | 11.4% |
成長投資枠だけを見ると、200万円超240万円以下まで使った割合は60歳代で18.1%、70歳代で17.1%と高くなります。これは毎月の給与から積み立てた結果というより、退職金や既存の預貯金、課税口座の資産をNISAへ移し替えた動きが含まれるためと考えられます。同じ「満額」でも、原資が積立か既存資産かで家計への負担はまったく違います。
枠別に見ると満額の意味が変わる
360万円は二つの枠の合計です。金融庁は枠ごとの利用状況も公表しており、それぞれの上限まで使った口座の割合は次のとおりです。
| 枠 | 年間の上限 | 上限に近い帯まで使った口座 | 割合 | 分母 |
|---|---|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 100万円超120万円以下が247万7,110口座 | 8.7% | 2,849万4,337口座 |
| 成長投資枠 | 240万円 | 200万円超240万円以下が368万3,990口座 | 12.9% | 2,853万8,206口座 |
| 合計 | 360万円 | 300万円超360万円以下が163万8,944口座 | 5.7% | 2,855万8,925口座 |
成長投資枠だけを上限まで使う口座は12.9%あり、つみたて投資枠の8.7%より多くなっています。一方で両方を同時に使い切る口座は5.7%に落ちます。つまり「片方の枠は埋めるが、両方は埋めない」という使い方が主流です。報道で語られた満額は、この二つの枠を同時に埋める最も負荷の高い形にあたります。
つみたて投資枠の上限120万円は月10万円です。成長投資枠の240万円は月20万円ですが、こちらは一括での買付もできるため、賞与や既存資産をまとめて入れる使い方が想定されています。毎月の給与から30万円を捻出する形だけが満額ではない、という点は押さえておく価値があります。
1口座あたりの年間買付額は平均66万円
2025年中の年間新規買付額は合計18兆7,487億円でした。同じ調査の2025年12月末のNISA口座数2,820万6,434口座で割ると、1口座あたり約66万円です。年間投資枠360万円に対して18.5%にあたります。
| 年代 | 2025年の年間新規買付額 | 1口座あたりの平均 |
|---|---|---|
| 20歳代 | 1兆2,648億円 | 約37.6万円 |
| 30歳代 | 3兆2,866億円 | 約66.5万円 |
| 40歳代 | 3兆9,061億円 | 約72.6万円 |
| 50歳代 | 4兆1,492億円 | 約75.0万円 |
| 60歳代 | 3兆4,007億円 | 約81.4万円 |
| 70歳代 | 2兆619億円 | 約67.0万円 |
| 80歳代以上 | 6,514億円 | 約40.9万円 |
買付額は2025年の年間実績、口座数は2025年12月末の残高ベースなので、両者の対象は完全には一致しません。年の途中で開設された口座も分母に入るため、実際に投資している人の平均はこれより高くなります。それでも、満額360万円とは大きな開きがあります。
累計で見ると、制度開始からの買付額は71兆3,847億円です。内訳は成長投資枠が55兆6,332億円、つみたて投資枠が15兆7,515億円で、金額の多くは一括投資が可能な成長投資枠に集まっています。金融庁のグラフ資料では、口座数2,821万口座、買付額71兆円と丸めて示されており、政府目標の2027年12月末3,400万口座、56兆円のうち買付額はすでに達成済みです。
| 指標 | 2025年12月末 | 政府目標(2027年12月末) |
|---|---|---|
| NISA口座数 | 2,821万口座 | 3,400万口座 |
| 買付額(累計) | 71兆円 | 56兆円 |
家計データで見る「月30万円」の重さ
年間360万円は月に直すと30万円です。この金額が家計にとってどれくらいの規模なのかを、総務省の家計調査報告(家計収支編)2025年平均で確認します。
| 二人以上の世帯のうち勤労者世帯(2025年平均) | 1か月あたり |
|---|---|
| 実収入 | 65万3,901円 |
| 非消費支出(税と社会保険料など) | 12万1,493円 |
| 可処分所得 | 53万2,408円 |
| 消費支出 | 34万6,297円 |
| 黒字(可処分所得から消費支出を引いた額) | 18万6,111円 |
| うち有価証券純購入 | 5,059円 |
平均的な共働き世帯でも、1か月に残るお金は18万6,111円です。満額の月30万円は、この黒字の1.61倍にあたります。可処分所得に対しては56.3%です。実際の有価証券純購入は月5,059円、年に直すと約6万円にとどまります。平均像から見れば、満額投資は例外的な家計行動です。
| 世帯区分(2025年平均) | 1か月の消費支出 |
|---|---|
| 総世帯 | 25万9,880円 |
| 二人以上の世帯 | 31万4,001円 |
| 単身世帯 | 17万3,042円 |
報道にあった「収入20万円で11万円を投資」を、この数字に当てはめて試算します。手取り20万円から11万円を投資に回すと、生活費に使える残りは9万円です。
| 項目 | 金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 手取り収入 | 20万0,000円 | 報道された事例の前提 |
| 投資額 | 11万0,000円 | 手取りの55.0% |
| 生活費に使える残り | 9万0,000円 | 単身世帯の平均消費支出の52.0% |
| 平均との差 | 8万3,042円 | 平均並みの生活には毎月これだけ足りない |
| 年間の投資額 | 132万円 | 年間投資枠360万円の36.7% |
ここまで削っても年間132万円で、満額360万円には届きません。満額を目指すこと自体が、収入20万円の家計では算術的に成立しないことがわかります。参考までに、国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査による1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円で、年間360万円は額面年収の75.3%にあたります。手取りではなく額面との比較でこの水準です。
急いで満額を埋める必要はない制度上の理由

「今年埋めないと損をする」という感覚が焦りを生みます。しかし金融庁のNISA制度解説を読むと、現行制度は急がせない設計になっています。
| 項目 | 現行NISAの内容 |
|---|---|
| 年間投資枠 | つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、併用で合計360万円 |
| 非課税保有限度額 | 生涯で1,800万円、うち成長投資枠は1,200万円が上限 |
| 非課税保有期間 | 無期限 |
| 口座開設期間 | 恒久化されている |
| 対象年齢 | 日本国内に住む18歳以上 |
| 売却した枠の再利用 | 翌年以降、売却した商品の簿価の分だけ復活する |
非課税保有期間が無期限で制度も恒久化されているため、1,800万円をいつまでに埋めなければならないという期限はありません。年間投資枠は繰り越せませんが、生涯枠そのものは減りません。埋めるペースを落としても、非課税で運用できる総額は変わらないということです。
| 毎月の積立額 | 年間 | 1,800万円を埋めるまでの年数 |
|---|---|---|
| 3万円 | 36万円 | 50.0年 |
| 5万円 | 60万円 | 30.0年 |
| 10万円 | 120万円 | 15.0年 |
| 15万円 | 180万円 | 10.0年 |
| 30万円 | 360万円 | 5.0年 |
この表は運用益を含まない元本ベースの単純計算です。実際の評価額は相場によって上下し、投資は元本が保証されていません。ここで示したいのは、満額を5年で埋めるという選択肢が唯一の正解ではないという点だけです。積み立てた資産をいつどう取り崩すかを先に決めておくと、入口の金額設定も落ち着きます。
余裕資金がないまま続けるリスク
報道で「危なっかしい」と指摘された核心は、暴落ではなく現金不足です。相場が下がっている局面で失業や入院が重なると、値下がりした資産を売って生活費に充てることになります。
公的な保障は存在しますが、受け取りまでに時間がかかる点は見落とされがちです。厚生労働省の資料では、自己都合離職者の基本手当の給付制限は令和7年4月1日から原則2か月が1か月に短縮されました。それでも待期期間7日と合わせて、支給開始まで一定の空白があります。全国健康保険協会の傷病手当金も、連続3日の待期の後、4日目以降が対象です。
| もしものとき | 使える公的な仕組み | 受け取りまでの空白 |
|---|---|---|
| 自己都合で退職した | 雇用保険の基本手当 | 待期7日に加えて原則1か月の給付制限 |
| 病気やけがで働けない | 健康保険の傷病手当金 | 連続3日の待期の後、4日目以降が対象 |
| 医療費が高額になった | 高額療養費制度 | 窓口負担を立て替える場合がある |
傷病手当金の額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2です。標準報酬月額が20万円なら1日あたり約4,444円、30日で約13万3,333円になります。手取り20万円で生活していた人にとっては、収入が3分の2に減る計算です。この差を埋めるのが現金であり、それが生活防衛資金の役割です。
| 世帯区分 | 1か月の消費支出 | 3か月分 | 6か月分 |
|---|---|---|---|
| 単身世帯 | 17万3,042円 | 51万9,126円 | 103万8,252円 |
| 二人以上の世帯 | 31万4,001円 | 94万2,003円 | 188万4,006円 |
生活防衛資金に法律上の基準はありません。上の表は家計調査の平均消費支出から機械的に計算した目安で、家賃や住宅ローン、扶養する家族の有無によって必要額は変わります。自分の1か月の支出を実額で把握し、それを基準に置き換えてください。
現金の余裕がどれだけあるかは、J-FLECの家計の金融行動に関する世論調査2025年からもうかがえます。2025年6月20日から7月2日に実施されたインターネットモニター調査で、単身世帯2,500、二人以上世帯5,000が対象です。
| 区分 | 金融資産非保有の割合 | 平均(非保有を含む) | 中央値(非保有を含む) |
|---|---|---|---|
| 単身世帯 | 30.1% | 919万円 | 130万円 |
| 単身世帯のうち20歳代 | 33.2% | 255万円 | 37万円 |
| 二人以上世帯 | 15.7% | 1,940万円 | 720万円 |
| 二人以上世帯のうち20歳代 | 21.6% | 525万円 | 125万円 |
単身世帯の中央値は130万円で、20歳代では37万円です。この水準では、生活防衛資金を確保する前に年間360万円を投資へ回す余地はほとんどありません。単身世帯の年代別貯蓄や年代別の安全資産の置き方も合わせて確認すると、自分の位置がつかみやすくなります。
2027年からの制度改正で何が変わるか
金融庁が2025年12月に公表した令和8年度税制改正の資料では、つみたて投資枠の年齢要件を撤廃し、0歳から17歳にも枠を設けることが盛り込まれました。開始は令和9年、つまり2027年からです。
| 区分 | 対象年齢 | 年間投資枠 | 非課税保有限度額 |
|---|---|---|---|
| つみたて投資枠(新設分) | 0歳から17歳 | 60万円 | 600万円 |
| つみたて投資枠 | 18歳以上 | 120万円 | 1,800万円(成長投資枠と共通) |
| 成長投資枠 | 18歳以上 | 240万円 | 1,200万円(内数) |
子ども向けの枠は、12歳以降に子の同意を得た場合にのみ親権者等による払出しが可能とされています。あわせて、つみたて投資枠の対象指数に読売株価指数やJPXプライム150指数などが追加され、主に公社債に投資する投資信託も対象に加える方向が示されました。18歳以上の年間投資枠360万円と生涯1,800万円は、この資料の範囲では変更されていません。
満額を目的化したときに起きやすい失敗
枠の消化を目的にすると、投資そのものより先に家計の運営が壊れます。よくある経路を整理します。
| 起きやすい行動 | その先で起きること | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 生活費を削って積立額を上げる | 予定外の支出でクレジットカードの残高が膨らむ | 積立額は手取りから固定費と生活費を引いた残りで決める |
| 生活防衛資金を投資に回す | 相場が下がった局面で売らざるを得なくなる | 現金で置く額を先に確保してから積立額を決める |
| 12月に枠の残りを一括で埋める | 買付時期が偏り、値動きの影響を受けやすくなる | 年内消化ではなく積立の継続を優先する |
| 下落したので積立を止める | 安い時期の買付を逃し、再開の判断も難しくなる | 止めずに続けられる金額まで最初から下げておく |
| 枠を埋めるために人付き合いを断つ | 転職や副業のきっかけを失い、収入側が伸びない | 支出を削る努力と収入を増やす努力を分けて考える |
家計調査の2025年平均では、二人以上勤労者世帯の預貯金純増は17万7,061円、有価証券純購入は5,059円でした。平均的な家計は、貯蓄の大半を現金で持ちながら少額を投資に回しています。この配分が正解だという話ではありませんが、満額投資がいかに平均から離れた行動かはわかります。
無理のない積立額の決め方
枠から逆算するのではなく、家計から積み上げる順序に変えるだけで、多くの問題は消えます。
| 手順 | やること | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 1 | 1か月の支出を実額で数える | 家賃、固定費、変動費を分けて把握する |
| 2 | 生活防衛資金の目標額を決める | 支出の3か月から6か月分を現金で置く |
| 3 | 3年以内に使う予定の資金を分ける | 結婚、引っ越し、車、教育費などは投資に回さない |
| 4 | 残った金額から積立額を決める | 収入が下がっても続けられる金額にする |
| 5 | 年1回だけ見直す | 昇給や転職のタイミングで金額を調整する |
NISAは制度としては使いやすく、非課税の効果も小さくありません。問題は制度ではなく、上限を目標だと思い込む使い方の側にあります。NISA貧乏の原因と抜け出し方や長期投資が続かない人の共通点も、行動の見直しに役立ちます。
よくある質問

NISA貧乏とは何ですか
NISAの投資枠を埋めることを優先し、生活費や緊急時の現金を削ってしまう状態を指す通称です。法律や制度上の用語ではなく、報道やSNSで使われている表現です。
年間360万円を埋めている人はどれくらいいますか
金融庁の調査では、2025年中に300万円超360万円以下を使った口座は全体の5.7%でした。分母は投資枠の利用状況を集計した2,855万8,925口座です。
NISA口座を持つ人の平均投資額はいくらですか
2025年の年間新規買付額18兆7,487億円を2025年12月末の2,820万6,434口座で割ると、1口座あたり約66万円です。年間投資枠360万円の18.5%にあたります。
今年の枠を使わないと損をしますか
年間投資枠は翌年に繰り越せませんが、生涯の非課税保有限度額1,800万円は減りません。非課税保有期間は無期限で制度も恒久化されているため、埋める期限そのものがありません。
売却したら枠は戻りますか
金融庁の解説では、売却した商品の簿価の分だけ、翌年以降に非課税投資枠が復活して再利用できます。売却した年のうちに同じ枠が戻るわけではありません。
生活防衛資金はいくら必要ですか
公的な基準はありません。家計調査の2025年平均で計算すると、単身世帯の3か月分が51万9,126円、6か月分が103万8,252円、二人以上世帯では94万2,003円と188万4,006円です。自分の実際の支出額で置き換えてください。
積立額を下げると非課税枠が減りますか
その年の年間投資枠は使い切らなければ消えますが、生涯の1,800万円は残ります。金額の変更や積立の一時停止は、多くの金融機関で手続きできます。
投資をやめて売却したほうがよいですか
この記事は売買を勧めるものではありません。判断材料としては、直近3年以内に使う予定の資金が投資に入っていないか、生活費の現金が確保されているかの2点を先に確認するのが現実的です。
収入20万円でも投資できますか
金額を選べば可能です。金融庁の分布では0円超60万円以下の帯が全体の35.4%を占めており、月5万円以下で続けている口座が最も多い層です。
高齢の人が満額を埋めているのはなぜですか
成長投資枠を200万円超240万円以下まで使った割合は60歳代で18.1%、70歳代で17.1%と高くなっています。毎月の給与からの積立ではなく、退職金や既存の預貯金、課税口座の資産を移し替えている分が含まれると考えられます。
0円の口座が36.6%もあるのはなぜですか
金融庁の集計は、2025年中に一度も買付がなかった口座を0円としています。開設したまま使っていない口座、積立を止めている口座、口座を持つだけの口座が含まれます。
2027年からのNISA改正で満額の考え方は変わりますか
令和8年度税制改正の資料では、0歳から17歳のつみたて投資枠が新設されます。18歳以上の年間360万円と生涯1,800万円は、この資料の範囲では変更されていません。
クレジットカード積立で枠を埋めても問題ありませんか
引き落とし日に残高が足りず分割やリボの利用が発生すると、その手数料が非課税の効果を上回る可能性があります。カードの引き落とし額まで含めて、毎月の収支が黒字に収まるかを先に確認してください。
つみたて投資枠と成長投資枠のどちらを先に使うべきですか
制度上はどちらからでも、併用でも使えます。金融庁の分布では上限まで使う口座の割合は成長投資枠が12.9%、つみたて投資枠が8.7%です。毎月の給与から積み立てる前提なら、上限が月10万円に収まるつみたて投資枠のほうが金額設計はしやすくなります。
投資と貯金はどちらを優先すべきですか
順番を決める基準は使う時期です。3年以内に使う可能性がある資金は現金で持ち、当面使わない資金を投資に回すのが一般的な考え方です。投資は元本が保証されていません。
まとめ

| 最終確認 | 答え |
|---|---|
| 年間360万円を使い切った口座 | 163万8,944口座、全体の5.7% |
| 1年間の買付が0円の口座 | 1,044万6,488口座、36.6% |
| 1口座あたりの年間買付額 | 約66万円、年間投資枠の18.5% |
| 月30万円の家計上の位置 | 二人以上勤労者世帯の黒字18万6,111円の1.61倍 |
| 生涯枠を埋める期限 | 非課税保有期間は無期限で、期限そのものがない |
| データの時点 | 口座は2025年12月末、買付額は2025年1月から12月 |
報道された「NISA貧乏」は、制度の欠陥ではなく順序の問題です。一次データを見る限り、年間360万円を使い切っている口座は5.7%で、1口座あたりの平均は約66万円にとどまります。満額が標準ではないという事実を押さえるだけで、焦りの前提は崩れます。
あわせて確認したいのは、投資額を増やすことと家計を強くすることは同じではないという点です。家計調査の平均像では、黒字18万6,111円のうち預貯金純増が17万7,061円を占めます。現金の厚みがあるからこそ、相場が下がった年も積立を止めずに済みます。順序を守れば、投資額が小さくても続けられる期間が長くなります。
数字を見るときは「いつの時点か」「分母は何か」「平均か中央値か」「積立か既存資産の移し替えか」を確認してください。そのうえで、生活防衛資金と3年以内に使う資金を先に分け、残りから積立額を決めれば、相場が下がった年も投資を続けやすくなります。本記事は制度と統計の解説であり、特定の金融商品の推奨ではありません。投資判断はご自身の状況に基づいて行ってください。

