金融

東証IPOはなぜ最少ペース?2026年1〜8月は22社、グロース市場「5年で100億円」基準を解説

※本記事はプロモーションが含まれています。

2026年1〜8月に東京証券取引所へ新規上場(IPO)した会社は22社でした。プライム、スタンダード、グロースの3市場が1年を通して動いた2023年以降では、同じ時期として最も少ない数です。背景として注目されているのが、2030年3月1日から厳しくなるグロース市場の上場維持基準で、「上場から5年経過後に時価総額100億円以上」が求められるようになります。

この記事では、日本取引所グループ(JPX)が公表しているIPOの月別の件数と上場会社数、東証の上場維持基準の見直し資料、東証が実施したアンケートを確認し、IPOがどれだけ減っているのか、新しい基準で何が変わるのか、個人投資家は何を確かめればよいのかを整理しました。報道でしか確認できない情報は「報道」と明記しています。内容は2026年9月28日時点で公開されている情報に基づいており、特定の銘柄やIPOへの申し込みについて、売買を推奨するものではありません。

先に結論、5つの疑問への答え

疑問答え根拠
2026年のIPOは何社か1〜8月は22社(プライム0社、スタンダード7社、グロース15社)。2025年の同じ時期の29社から7社減、24.1%減JPX「最近のIPOの状況」
9月を足すとどうなるか9月は9社が上場済みまたは上場予定で、1〜9月は31社の見込み。2025年1〜9月の33社を下回るJPX「新規上場会社情報」
年間でも最少になるのか10〜12月の件数しだい。2025年の10〜12月(26社)と同じなら57社で2023年以降の最少、2024年(29社)と同じなら60社で2025年の59社を上回るJPXの月別件数から試算
上場維持基準は何が変わるのかグロース市場の時価総額の基準が、2030年3月1日から「上場10年経過後に40億円以上」から「上場5年経過後に100億円以上」になる。新規上場の基準は変わらない東証の見直し資料、JPXの上場維持基準のページ
IPOが減った理由は何か東証のアンケートでは、上場を目指す企業から「100億円という基準は極めて高い」「IPOかM&Aか迷っている」という声が出ている。M&Aで規模を広げてからの上場や、生成AIの普及によるソフト開発企業の上場見送りは報道で伝えられている見方東証「グロース市場アンケートの結果と今後の方針について」、報道

要するに、IPOの減少は主にグロース市場で起きていて、スタンダード市場はむしろ増えています(1〜9月は前年の7社から13社の見込み)。年間で最少になるかはまだ決まっておらず、10〜12月にどれだけ上場が集まるかで変わります。


2026年1〜8月のIPOは22社、市場別の内訳

JPXの「最近のIPOの状況」は、東証の3市場へのIPOを月別に数えています。この表の数には、プロ投資家向けのTOKYO PRO Marketからの上場と、持株会社化などに伴うテクニカル上場は含まれていません。1〜8月の合計を年ごとに比べると、次のとおりです。

年プライムスタンダードグロース合計
2023年1社11社39社51社
2024年0社7社38社45社
2025年2社6社21社29社
2026年0社7社15社22社

2026年の22社は、2025年の29社から7社減(24.1%減)、2023年の51社からは56.9%減です。減っているのはグロース市場で、2025年の21社から6社減りました。スタンダード市場は7社で、2024年と同じ水準を保っています。IPOに占めるグロース市場の割合は、2023年の76.5%から2026年は68.2%に下がりました。

月ごとに見ると、2026年は1月と5月にIPOが1社もありませんでした。1〜3月は6社、1〜6月のグロース市場へのIPOは11社で、2025年1〜6月の18社を大きく下回っています。

月プライムスタンダードグロース合計
1月0社0社0社0社
2月0社2社1社3社
3月0社0社3社3社
4月0社4社4社8社
5月0社0社0社0社
6月0社0社3社3社
7月0社1社3社4社
8月0社0社1社1社

なお、プライム市場への上場は2026年もありますが、4月1日の5社や6月1日、7月1日の各1社はテクニカル上場で、IPOの数には入りません。IPO投資の基本はIPO投資の仕組みを解説した記事で紹介しています。

9月を足すと31社、前年の33社に届かない

9月は上場が続いています。JPXの新規上場会社情報に載っている9月の上場は、テクニカル上場を除くと次の9社です。9月29日のクラサスケミカルは上場予定で、公募や売出しを行わないため、公開価格の代わりに流通参考値段が示されています。

上場日会社名市場公開価格
9月11日KOMPEITOグロース1,600円
9月16日オーディオストックグロース1,060円
9月16日オリバースタンダード305円
9月17日Skyfallグロース1,500円
9月18日akippaスタンダード570円
9月18日ベルテックススタンダード550円
9月18日テクノクラフトスタンダード650円
9月25日レイヤードスタンダード1,400円
9月29日(予定)クラサスケミカルスタンダード公募・売出しなし(流通参考値段200円)

9社のうちグロース市場は3社、スタンダード市場は6社です。1〜8月の22社に9社を足すと、1〜9月は31社の見込みで、2025年1〜9月の33社より2社少なくなります。市場別に見ると、1〜9月のスタンダード市場は7社から13社にほぼ倍増した一方、グロース市場は22社から18社に減っています。全体の件数は前年に近づいてきましたが、中身はスタンダード市場への上場が増え、グロース市場への上場が減るという形に変わっています。akippaの上場の詳細はakippaのIPOを一次資料で解説した記事にまとめています。

年1〜9月10〜12月年間
2023年60社28社88社
2024年51社29社80社
2025年33社26社59社
2026年31社(見込み)未確定未確定


年間で最少になるかは10〜12月しだい

「今年は年間でも最少になる」という見方もありますが、IPOは例年10〜12月、特に12月に集中します。2023年から2025年の10〜12月は26〜29社で、年間の3割強から4割強を占めています。2026年の10〜12月が過去の実績と同じだった場合を試算しました。

10〜12月の前提10〜12月の件数2026年の年間2025年の59社との比較
2025年と同じ26社57社下回る(2023年以降で最少)
2023年と同じ28社59社並ぶ
2024年と同じ29社60社上回る

2025年の59社に並ぶには、10〜12月に28社が必要です。9月28日時点で10月の上場が決まっているのは、10月15日にグロース市場へ上場予定のルクレ1社(テクニカル上場を除く)です。上場承認は上場日のおよそ1か月前に出るため、10〜12月の件数が見えてくるのはこれからです。年間最少になるかは、10〜12月の件数しだいと考えておくのが正確です。

TOKYO PRO Marketへの上場は増えている

一般の3市場とは逆に、プロ投資家向けのTOKYO PRO Marketへの上場は増えています。

年1〜8月
2023年18社
2024年31社
2025年27社
2026年33社

2026年1〜8月は33社で、2025年の27社を上回りました。JPXの上場会社数を見ると、TOKYO PRO Marketの上場会社は2026年1月末の163社から8月末の187社に増えています。TOKYO PRO Marketは個人投資家が原則として売買できない市場で、東証は2026年4月7日のフォローアップ会議で、上場目的の開示を求める資料も示しています。一般市場のIPOが減る一方で、上場の選び方が変わりつつあることがうかがえます。

グロース市場の上場維持基準はどう変わるのか

東証は2025年9月26日に「グロース市場の上場維持基準の見直し等について」を公表し、意見募集を経て2025年12月に規則改正を終えました。JPXの上場維持基準のページにも、2030年3月1日から基準が変わることが明記されています。

項目見直し前(現在)見直し後(2030年3月1日から)
時価総額の基準40億円以上100億円以上
いつから求められるか上場から10年経過後上場から5年経過後
判定する時点事業年度の末日事業年度の末日
時価総額の算定事業年度の末日以前3か月間の終値の平均 × 上場株式数同じ
基準を下回ったとき改善期間1年改善期間1年

金額は2.5倍になり、求められるまでの期間は半分になります。発行済み株式数が1,000万株の会社なら、3か月平均の株価で1,000円を保つ必要がある計算です。東証は見直しの目的を、グロース市場の会社に機関投資家の投資対象となる規模への早期の成長を促すとともに、企業間のM&Aや起業家の次の創業を促すためと説明しています。2026年9月28日から2030年3月1日までは1,250日です。

見直しはこれだけではありません。主な変更点を並べます。

項目内容始まる時期
成長戦略の記載上場5年未満でも、事業年度の末日の時価総額が100億円未満なら、「事業計画及び成長可能性に関する事項」に新しい基準を意識した成長戦略を書く2025年12月末日以後に到来する事業年度の末日から
スタンダード市場への市場区分の変更グロース市場からの変更で、最近1年間の利益の額1億円以上という形式要件を適用しない2025年12月の施行日以後の申請から
新規上場の基準流通株式時価総額5億円以上などの新規上場基準は変わりません変更なし
流通株式の定義銀行や事業法人などが持つ株式のうち、市場に流通する見込みが高い目的のものも当分の間、流通株式として扱う2025年12月の施行日以後

スタンダード市場への移りやすさが増したのは、利益を出すために成長投資を抑えることがないようにするためだと東証は説明しています。一方で、「新規上場の基準も厳しくなった」というのは誤りで、グロース市場の新規上場基準は変わりません。上場時点では小さくても、5年で100億円に届く成長の道筋が求められるようになった、というのが正確な理解です。


基準の判定と上場廃止までの流れ

「100億円に届かないとすぐ上場廃止になる」と受け取られがちですが、実際には改善期間があり、条件によっては猶予期間もあります。東証の資料をもとに、3月決算の会社を例に流れを整理しました。

段階時期の例内容
最初の判定2030年3月31日2030年3月1日以後最初に到来する事業年度の末日。上場から5年を経過していれば、1〜3月の終値の平均で時価総額を算定し、100億円以上か判定する
計画の開示基準を下回ってから3か月以内基準に適合するための取組みと実施時期を書いた計画を開示する
改善期間2031年3月31日まで基準に適合しない状態になった日の翌日から1年。この間に基準を満たせば上場を続けられる
猶予期間適合計画に書いた計画期間の末日まで2030年2月28日時点でグロース市場に上場し、適合計画を開示した会社は、改善期間の後も計画期間の末日まで上場廃止を猶予される
上場廃止改善期間や猶予期間のあと基準を満たせなければ、監理銘柄・整理銘柄の指定を経て上場廃止になる

猶予期間中でも、見直し前の基準(上場10年経過後に40億円)を下回った場合は、改善のための期間を置かずに上場廃止になります。東証は、以前の経過措置で長い計画を開示した会社が投資家に評価されず株価が下がった例を踏まえ、計画期間は必要最低限にすることが望ましいとしています。

上場した時期で、最初の判定はいつになるか

新しい基準で最初に判定されるのは、上場から5年を経過した後、かつ2030年3月1日以後に到来する事業年度の末日です。3月決算の会社を例に、上場した時期ごとの目安を計算しました。決算期が違えば判定の時期も変わるため、実際の時期は各社の開示で確認してください。

上場した時期の例5年を経過する時期最初の判定の目安
2020年12月2025年12月(経過済み)2030年3月31日
2024年9月2029年9月2030年3月31日
2025年9月2030年9月2031年3月31日
2026年9月2031年9月2032年3月31日

すでに上場から5年以上たっている会社は、2030年3月31日の事業年度の末日から新しい基準で判定されます。2026年9月にグロース市場へ上場した会社なら、最初の判定は2032年3月31日が目安で、それまでに100億円に届く成長が求められます。なお、2030年3月1日以後最初の事業年度の末日の時点で上場から5年たっていない会社でも、時価総額が100億円未満で適合計画を開示すれば、計画期間の末日まで上場廃止を猶予される仕組みがあります。

いまの基準でも、改善期間に入っている会社がある

2030年の見直しを待たずに、いまの上場維持基準でも上場廃止は起きています。2022年4月の市場再編のときに設けられた経過措置は2025年3月に終わり、本来の上場維持基準が適用されています。東証の2026年1月14日の資料によると、2025年11月末時点で改善期間に入っていた会社は161社でした。

市場社数
プライム市場46社
スタンダード市場82社
グロース市場33社
合計161社

このうち2026年3月に改善期間の終了を迎える会社は48社で、基準に適合していなければ原則6か月の監理・整理銘柄の期間を経て上場廃止になると東証は説明しています。改善期間に入っている会社は、JPXの改善期間一覧で確認できます。2030年からは、これにグロース市場の時価総額100億円の基準が加わることになります。

100億円に届かない会社はどれくらいあるか

JPXの上場会社数によると、グロース市場の上場会社は2026年8月末時点で598社です。報道では、ニッセイ基礎研究所の集計として、8月末時点で時価総額100億円未満のグロース市場の会社は403社と伝えられています。598社で割ると67.4%で、7割近くになります。

月末グロース市場スタンダード市場TOKYO PRO Market
2026年1月末610社1,566社163社
2026年3月末603社1,571社176社
2026年5月末597社1,577社181社
2026年8月末598社1,557社187社

2月から8月にグロース市場へ15社が新規上場したのに、上場会社数は差し引き12社減りました。計算上は、市場区分の変更や上場廃止などで27社が抜けたことになります(内訳はこの数字からは分かりません)。入ってくる会社が減り、出ていく会社が続いているのが、いまのグロース市場の姿です。

東証の2026年1月14日の資料では、グロース市場の時価総額は2025年12月末時点で8.8兆円と東証全体の1%にとどまり、東証グロース市場指数は2022年4月4日を100として85.7でした。同じ時点のプライム市場指数は175.5で、グロース市場の株価の低迷がIPOに影響したと東証自身が分析しています。


IPOが減った理由、確認できることとできないこと

IPOが減った理由として、いくつかの説明が出ています。一次資料で確認できるものと、報道でしか確認できないものを分けました。

説明確認できること根拠の種類
新しい上場維持基準を見据えて上場を慎重にしている東証のアンケートで、未上場企業から「時価総額100億円という基準は極めて高く、上場を目指すこと自体の妥当性に苦慮している」という声が出ている一次資料(東証)
IPOではなくM&Aを選ぶ、またはM&Aで規模を広げてから上場するアンケートに「IPOを目指すべきかM&Aを目指すべきか迷っている」という声。東証も見直しの目的にM&Aの促進を挙げている。規模を広げてから上場する企業が増えているという指摘は研究員の見方として報じられたもの一次資料と報道
グロース市場の株価が低迷している東証は、上場申請の時期の株価の低迷がIPOに影響したと分析(2026年1月時点、足元は回復傾向とも記載)一次資料(東証)
生成AIの普及で、ソフト開発企業が上場を見送っている業務用ソフトの役割がAIに置き換わるとの見方から、株価上昇の見通しが立たないソフト開発企業がIPOを見送っているという証券関係者の見方が報じられている。件数などのデータは示されていない報道のみ

「IPOが減ったのはAIのせい」と言い切れる材料はありません。生成AIの影響は報道で伝えられている見方で、どれだけの会社が見送ったかを示すデータは公表されていません。一次資料から言えるのは、グロース市場の株価の低迷と、新しい基準を前にした企業の迷いです。

東証のアンケートに出た、上場を目指す企業の声

東証は2026年6月4日、グロース市場の上場会社と上場を検討しているスタートアップへのアンケートの結果を公表しました。回答したのは145社で、上場済みが109社、未上場が36社です。未上場企業の上場希望時期は「2年後」が36%で最も多く、「1年後」が19%、「3年後」が19%、「4年後以降」が25%でした。

テーマ寄せられた声の要旨回答企業の想定時価総額
新しい基準現在の成長スピードでは時価総額100億円は極めて高く、上場を目指すこと自体に迷っている。出資ファンドの償還期限が5年以内に迫り、現実的な出口を描けるか危機感がある40億円未満
出口の選び方IPOを目指すべきかM&Aを目指すべきか迷っている40億円未満
上場の時期しばらく赤字が続く事業モデルで、赤字のまま上場するか黒字化してから上場するか、評価との関係で最適な時期を検討している500億円以上
上場後の市場機関投資家が投資対象にするには、時価総額100億円を相当程度上回る規模や流動性が必要な場合が多く、早期上場が最適とは限らない500億円以上

すでに上場している109社が挙げた課題は、成長戦略(34社)、人材や資金のリソース不足(32社)、投資家との接点不足やIR活動(31社)、流動性の低さや株価形成(27社)の順でした。

課題挙げた社数寄せられた声の例
成長戦略の策定と実行34社目先の業績確保や予実管理にとらわれ、中長期の成長の方向性を議論できていない
人材・資金のリソース不足32社専門的な人材の確保と定着が成長の制約になっている
投資家との接点不足・IR活動31社個人投資家への知名度が低く、情報を出しても反応が薄い
流動性の低さ・株価形成27社売買代金が少なく、機関投資家が参入しづらい

小さな会社ほど基準の高さに悩み、大きな会社ほど上場後の評価や流動性を意識している様子がうかがえます。どちらも、急いで上場するより、規模や時期を見極める方向に働く声です。

東証がいま進めていること

時期取組み
2025年9月26日上場維持基準の見直し案を公表し、グロース上場会社に「高い成長を目指した経営」を働きかけ
2025年12月上場維持基準の見直しの規則改正が完了
2026年2月6日成長に積極的に取り組むグロース上場企業の開示を一覧にした特設ページを開設
2026年3月9日JPX総研がJPXスタートアップ急成長100指数の配信を開始
2026年6月4日グロース市場アンケートの結果を公表
2026年8月6日グロース市場の発展に向けた検討会の開催を公表。第1回(8月21日)は上場企業、第2回(9月16日)は未上場企業の観点で議論する日程

東証は、基準を厳しくするだけでなく、成長に取り組む会社を投資家に見えやすくする施策も並行して進めています。検討会の議論は今後のフォローアップ会議に報告される予定です。

個人投資家が確認しておきたいこと

IPOの減少と新しい基準は、IPOに申し込む人にも、すでにグロース株を持っている人にも関係します。IPOの件数が減れば、申し込める機会そのものが少なくなります。一方で、東証は上場を目指す会社に5年で100億円に届く成長を求めているため、上場時の資料で成長の道筋がどう説明されているかは、これまで以上に大事な判断材料になります。確認しておきたい点をまとめました。

立場確認すること見る場所
IPOに申し込む人上場する市場と、上場後5年で時価総額100億円に届く成長の道筋が示されているか目論見書、上場時の成長可能性に関する資料
グロース株を持っている人上場から何年たっているか、事業年度の末日の時価総額がいくらか会社の決算短信、JPXの上場会社情報
グロース株を持っている人時価総額が100億円未満の場合、新しい基準を意識した成長戦略が書かれているか事業計画及び成長可能性に関する事項
基準を下回った会社の株主改善期間や計画期限、市場区分の変更や非公開化の検討状況適時開示、JPXの改善期間一覧

上場維持基準を満たせない会社が取り得る道には、成長して基準を満たすほか、スタンダード市場への市場区分の変更、他社との統合、非公開化などがあります。非公開化の手段となるTOBの基本はTOBの意味と株価急騰時の対処法の記事で扱っています。

よくある誤解と実際

よくある受け止め実際
今年は年間でも最少になる1〜9月は31社の見込みで前年を下回るが、年間で最少になるかは10〜12月の件数しだい
100億円に届かないとすぐ上場廃止判定は上場から5年経過後の事業年度の末日。下回っても改善期間が1年あり、条件を満たせば猶予期間もある
新規上場の基準も厳しくなった新規上場基準は変わりません。流通株式時価総額5億円以上などの基準のまま
IPOが減ったのはAIのせい生成AIの影響は報道で伝えられた見方。一次資料で確認できるのは株価の低迷と新基準を前にした企業の迷い
IPOはどの市場でも減っている減少は主にグロース市場。スタンダード市場は1〜9月で前年より増える見込みで、TOKYO PRO Marketも増えている


よくある質問

2026年1〜8月のIPOは何社ですか

JPXによると22社で、プライム市場0社、スタンダード市場7社、グロース市場15社です。TOKYO PRO Marketからの上場とテクニカル上場は含みません。

2025年の同じ時期と比べてどれくらい減りましたか

2025年1〜8月の29社から7社減、24.1%減です。グロース市場は21社から15社に減りました。

2025年の年間のIPOは何社でしたか

JPXの「最近のIPOの状況」では59社(プライム7社、スタンダード12社、グロース40社)です。東証の2026年1月の資料では、TOKYO PRO Marketを経由した上場を含めた国内の新規上場は66社とされており、数え方で数字が変わります。

グロース市場の上場維持基準はいつから変わりますか

2030年3月1日からです。2030年3月1日以後最初に到来する事業年度の末日から、新しい基準で判定されます。

時価総額100億円はどう計算しますか

事業年度の末日以前3か月間の終値の平均に、事業年度の末日の上場株式数を掛けて算定します。1日だけ100億円を超えても基準を満たしたことにはなりません。

上場から5年たっていない会社は関係ありませんか

判定の対象は上場から5年経過後ですが、5年未満でも事業年度の末日の時価総額が100億円未満なら、「事業計画及び成長可能性に関する事項」に新しい基準を意識した成長戦略を書く必要があります。2025年12月末日以後の事業年度の末日から求められています。

基準を下回るとすぐに上場廃止になりますか

なりません。基準に適合しない状態になってから1年の改善期間があり、2030年2月28日時点で上場していて適合計画を開示した会社には猶予期間もあります。ただし、猶予期間中に見直し前の基準(上場10年経過後に40億円)を下回ると、改善のための期間なく上場廃止になります。

グロース市場から移ることはできますか

スタンダード市場への市場区分の変更では、最近1年間の利益の額1億円以上という形式要件が適用されなくなりました。ただし、企業の継続性などの実質的な審査はあります。

新規上場の基準は変わりましたか

変わっていません。グロース市場への新規上場には、引き続き流通株式時価総額5億円以上、株主数150人以上などの基準があります。

時価総額100億円未満のグロース企業はどれくらいありますか

報道では、ニッセイ基礎研究所の集計として2026年8月末時点で403社と伝えられています。JPXの8月末の上場会社数598社で割ると67.4%です。

今年は年間でも最少になりますか

まだ分かりません。1〜9月は31社の見込みで、10〜12月が2025年と同じ26社なら57社で最少、2024年と同じ29社なら60社で2025年を上回ります。

TOKYO PRO Marketとは何ですか

プロ投資家向けの市場で、個人投資家は原則として売買できません。2026年1〜8月の上場は33社で、2025年同期の27社より増えています。

IPOが多いのは何月ですか

JPXの月別の件数では、12月は2024年に16社、2025年に14社で、どちらも1年で最も多い月でした。2023年は6月の15社が最多で、12月は14社でした。3月も多く、2023年と2024年はそれぞれ14社でした。年間の件数は、年末の上場の集まり方で大きく変わります。

テクニカル上場とは何ですか

上場会社が持株会社をつくる場合などに、上場廃止になる会社に代わって新しい会社が上場する手続きです。JPXのIPOの件数には含まれません。2026年4月1日にプライム市場へ上場した5社もテクニカル上場です。

IPOの件数はどこで確認できますか

JPXの「最近のIPOの状況」に、市場別・月別の件数が載っています。上場日や公開価格は「新規上場会社情報」で確認できます。2026年の表は9月1日に8月分まで更新されました。

グロース株は売ったほうがよいですか

一律には言えません。上場からの年数、事業年度の末日の時価総額、成長戦略の開示内容は会社ごとに違います。まず保有している会社の開示を確認してください。この記事は売買を推奨するものではありません。


まとめ

  • 2026年1〜8月の東証のIPOは22社で、2023年以降の同じ時期で最少。2025年の29社から7社減、24.1%減
  • 減っているのは主にグロース市場(21社から15社)。スタンダード市場は1〜8月が7社で前年並み、1〜9月は13社に増える見込み。TOKYO PRO Marketは33社に増加
  • 9月の9社を足すと1〜9月は31社の見込みで、2025年の33社を下回る。年間で最少になるかは10〜12月の件数しだい
  • グロース市場の上場維持基準は2030年3月1日から「上場から5年経過後に時価総額100億円以上」に。新規上場基準は変わらない
  • 基準を下回っても改善期間1年があり、適合計画を開示すれば猶予期間もある
  • 東証のアンケートでは、上場を目指す企業から基準の高さやIPOとM&Aの選択に迷う声が出ている

IPOの件数は、市場の環境と上場を目指す会社の判断の両方で動きます。10〜12月のIPOの状況がJPXで公表されたら、年間の件数と市場別の内訳を確認してこの記事を更新します。

日本取引所グループ・東京証券取引所

関連する記事

-金融
-, ,