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配当を受け取れる株と、配当を出さずに成長へ資金を回す株。長く持つなら、どちらを選べばよいのでしょうか。花王のような連続増配企業は魅力的ですが、「配当があるから安心」「無配だから買わない」と決める前に確認したい点があります。
配当株と無配株の優劣は、配当の有無だけでは決まりません。受け取った配当と株価の変化を合計した収益、企業の利益と資金の使い方、自分がお金を使う時期を合わせて比較することが大切です。
この記事では、花王の36期連続増配と株式分割後の配当を整理し、同じ100万円を投資した場合の例で違いを比べます。読み終えると、利回りの数字に加えて何を見ればよいか、自分の目的に合う選び方が分かります。
先に押さえるポイント
- 配当と株価の変化を合計したトータルリターンで比べる。
- 連続増配は過去の実績で、今後の配当や株価を保証しない。
- 無配の理由は、成長投資と業績不振などに分けて確認する。
- 高利回りは、配当増だけでなく株価下落によっても起きる。
- 花王の2025年の年間154円と、2026年の分割後配当を同じ株数で比較しない。
- NISAで国内上場株式の配当を非課税で受け取るには、受取方式も確認する。
配当株と無配株はどっちがいい?最初に比べたい違い

配当は、会社が株主へ利益などを分配する方法の一つです。配当を出す会社にも成長を続ける会社はあり、無配の会社にも成長中の会社と業績が厳しい会社があります。「配当株=成長しない」「無配株=成長株」と同じ意味にしないでください。
| 比較する項目 | 配当を出す株 | 配当を出さない株 |
|---|---|---|
| 保有中の現金収入 | 配当が実施されれば受け取れる | 配当による収入はない |
| 企業のお金の使い方 | 還元と投資のバランスを見る | 留保した資金の用途と成果を見る |
| 投資家が現金を得る方法 | 配当の受領や株式の売却 | 株式の売却など |
| 確認するリスク | 減配・無配転落、株価下落など | 投資の失敗、成長鈍化、株価下落など |
| 評価する収益 | 配当と株価変化の合計 | 株価変化を含む投資全体の収益 |
会社に利益が残ることと、株主が利益を得ることは別
無配で資金を会社に残しても、その資金が有効に使われなければ企業価値の向上にはつながりません。設備投資、研究開発、買収、財務の改善など、会社が何を目指し、どのような成果を出しているかを追います。
反対に、配当を増やしていても、それ以上に利益や現金の余裕が減っていれば、維持できるかが論点になります。配当という結果だけでなく、その原資を確認しましょう。
花王は36期連続増配|2026年の配当は株式分割に注意

花王は、2025年12月期に年間1株154円の配当を実施し、36期連続増配を達成したと公表しています。株主還元方針では、安定的・継続的な増配に加え、戦略投資や設備投資も資金の活用先として掲げています。
年間154円の実績を、今の100株にそのまま掛けない
花王は2026年7月1日付で1株を2株に分割しました。分割前に100株を保有していた人は、同じ保有を継続すると分割後は200株になります。1株当たりの数値を比べるときは、この株数の変化をそろえる必要があります。
2026年8月5日公表の中間決算短信では、中間配当は分割前の1株当たり78円、期末配当予想は分割後の1株当たり39円です。会社は分割前の基準なら年間156円相当と説明し、異なる株数基準の中間78円と期末39円を単純合算した年間配当額は記載していません。
| 配当の区分 | 1株当たりの金額 | 株数の基準 |
|---|---|---|
| 2025年12月期の年間実績 | 154円 | 2026年7月の分割前 |
| 2026年12月期の中間配当 | 78円 | 分割前 |
| 2026年12月期の期末予想 | 39円 | 分割後 |
| 2026年の年間予想を分割前換算 | 156円相当 | 中間・期末を同じ基準へ換算 |
出典 花王・2026年12月期中間決算短信、配当の状況と株式分割の注記
分割前からの保有と、今から買う場合は受取額が違う
分割前から100株を保有し、中間・期末の配当を受け取る条件を満たすと仮定すると、中間は78円×100株=7,800円、期末は39円×分割後200株=7,800円で、合計1万5,600円です。期末は予想額で、税引前の計算です。
一方、これから分割後の100株を買う人が期末配当の条件を満たす場合、同じ予想額で計算した期末分は39円×100株=3,900円です。すでに基準日が過ぎた中間配当まで受け取れるわけではなく、2027年以降の年間配当額も、この予想だけでは確定しません。
このように、連続増配の実績を読むときも「どの年度か」「分割の前後か」「これから受け取れる配当か」を分けると、期待する収入を計算しやすくなります。
配当あり・なしを100万円で比較|トータルリターンの見方

トータルリターンは、値上がり・値下がりと、受け取った配当などを合わせて見る考え方です。配当だけを見ると、保有株が値下がりしている事実を見落とす場合があります。
以下はすべて架空の例です。最初に100万円を投資し、追加購入・売却や配当再投資は行わず、税金と費用を考えない1年間で比べます。評価額は期末時点の含み損益を反映し、売却済みという意味ではありません。
| 仮定の例 | 1年後の株式評価額 | 受取配当 | 評価額と配当の合計 | 当初比 |
|---|---|---|---|---|
| A・配当あり、株価下落 | 90万円 | 4万円 | 94万円 | -6% |
| B・無配、株価上昇 | 108万円 | 0円 | 108万円 | +8% |
| C・配当あり、株価上昇 | 108万円 | 4万円 | 112万円 | +12% |
| D・無配、株価下落 | 80万円 | 0円 | 80万円 | -20% |
Aは配当4万円を得ても、株価下落を含めると6万円のマイナスです。Bは無配でも8万円増えています。一方でCは配当と値上がりの両方を得ており、Dでは無配のまま値下がりしています。この表はどちらかが有利という予測ではなく、両方の要素を同じ条件で比べる例です。
株価が「3,000円上がった」だけでは比較できない
値上がりの金額を比べるときは、購入価格、期間、分割の有無をそろえます。例えば株価3,000円から6,000円への上昇は100%ですが、3万円から3万3,000円への上昇は10%です。どちらも3,000円上がっていても、投資額に対する伸びは異なります。
さらに一つの期間で値上がりした無配株だけを取り上げると、値下がりした会社が比較から抜けてしまいます。実績を検証するなら、同じ期間、配当込み、株式分割調整済みの条件で比較することが重要です。
配当は、受け取るだけで資産が純増する仕組みではない
配当を受け取る権利がなくなる権利落ち日には、理論上、配当相当分が株価から差し引かれます。実際の値動きには相場全体や個別材料も重なるため、必ず配当額ちょうど下がるという意味ではありません。
配当を受け取った後も、株式評価額と現金を合計して見ましょう。配当による収入があることと、投資全体で利益が出ていることは、別々に確認する必要があります。
配当株・無配株を選ぶときの5つの確認点

1. 配当利回りの上昇は、増配か株価下落か
配当利回りは、年間1株当たり配当金÷株価×100で計算します。年間配当100円、株価2,500円なら4%ですが、配当が同じまま株価が2,000円に下がると5%になります。利回りの上昇だけでは、事業がよくなったとは判断できません。
予想利回りを使うときは、配当が予想どおり支払われるとは限らないこと、すでに受け取れない過去の配当が混ざっていないことも確認しましょう。
2. 配当性向は、利益が落ちた理由も見る
配当性向は、1株当たり配当金÷1株当たり当期純利益×100で求める指標です。配当100円、1株利益200円なら50%ですが、利益が100円に減れば100%になります。配当が同額でも、利益に対する負担は変わります。
特別損益などで利益が大きく動く場合もあるため、単年度の数字だけで安全性を決めません。赤字の期は、通常の黒字企業と同じ感覚で比率を読むことが難しくなります。業種も含め、利益の中身を確認してください。
3. 配当や投資を支える現金があるか
損益計算書の利益に加え、営業キャッシュフロー、設備投資、借入の返済予定、手元資金を見ます。利益が出ていても売掛金や在庫が増えていれば、現金の余裕は別に考える必要があります。
無配企業も同じです。現金を残す理由が成長投資なのか、借入返済や資金繰りへの備えなのかを読み、資金を使った後の成果を追いましょう。
4. 普通配当と記念・特別配当を分ける
会社が公表する年間配当には、通常の配当に記念配当や特別配当が加わる場合があります。一時的な上乗せを、翌年も続く収入として計算しないことが大切です。
配当方針も、増配を目指すのか、一定の配当性向なのか、最低水準を設けるのかで異なります。方針には条件や見直しの可能性があるため、会社の原文を読みましょう。
増配の中身を詳しく比較したい人は、増配株の選び方と配当性向・利益の確認ポイントへ進めます。
5. 無配なら、投資した資金がどう成長したか
成長投資を理由に無配としている会社では、売上増加だけでなく、利益率、顧客基盤、投資回収の説明を確認します。規模が大きくなっても利益や現金が増えなければ、期待した成果が出ているかを見直す必要があります。
「配当を出さないから株価が上がる」という因果関係を決めつけず、投資の成果と購入時の株価を合わせて判断してください。
配当を生活費に使う人と、資産を増やしたい人の選び方

同じ投資商品でも、現金を使う予定と投資期間で評価は変わります。次の表は選び方を整理するもので、どの人にも同じ比率を勧めるものではありません。
| 目的・状況 | 優先して考えること | 避けたい思い込み |
|---|---|---|
| 配当を家計の補助にしたい | 税引後の受取額、減配時の家計、分散 | 毎年必ず同額が入る |
| 長期で資産形成したい | 配当込みの成長、費用、投資期間 | 無配なら複利で必ず増える |
| 数年以内に使う予定がある | 現金の確保、損失時の売却の必要性 | 高配当なら短期の生活資金でも安心 |
| 配当も成長も取り入れたい | 目的ごとの資金管理、業種と銘柄の偏り | 銘柄数さえ増やせば分散できる |
配当を使うか、再投資するかも決めておく
配当を生活費に回すと、家計で使える現金は増えますが、その分を再投資した場合とは資産の増え方が異なります。再投資する場合も税金や売買単位、費用、再投資先の価格を考える必要があります。
配当と成長の両方を組み合わせたい人は、高配当株・優待株・成長株の配分を考える方法も参考にしてください。紹介する比率をそのまま使う前に、自分の予定支出と損失への耐性を確かめましょう。
配当金の税金とNISA|手取りで比較するための注意点

国内上場株式の配当は、一般的な個人株主の課税口座では、支払い時に通常20.315%が源泉徴収されます。所得税等15.315%と地方税5%の合計です。申告方法や個別事情によって最終的な税負担が変わる場合があります。
税引前4万円の配当なら、20.315%を単純に差し引いた手取りは3万1,874円です。税引前の利回りだけを、生活費に使える金額として扱わないでください。ここでは個々の支払いごとの端数処理や申告による調整は考えていません。
NISAで国内上場株式の配当を非課税にする受取方式
NISAで保有する国内上場株式の配当について、非課税で受け取るには、証券会社の口座で受け取る株式数比例配分方式を選んでいる必要があります。発行会社から直接受け取る方式などでは、NISA保有株でも配当が課税扱いになる場合があります。
NISAでも値下がりや減配のリスクはあります。また、配当株だけが非課税制度の活用先というわけではなく、売却益も含めた目的に合わせて考えることが大切です。外国株の現地課税などは国内株と取り扱いが異なるため、ここでの計算をそのまま当てはめないでください。
受取方式を含む具体的な設定は、楽天証券のNISAで確認したい配当金・積立・認証の設定にまとめています。
銘柄の比較やNISAの利用を検討する人へ
投資先の候補が決まったら、公式IRと証券会社の情報を見比べ、配当予想、決算、売買にかかる費用を確認しましょう。口座を選ぶ際は、取扱商品、手数料、配当の受取設定、認証機能も比較したい項目です。
すでに使いやすい口座がある人は、今の口座で設定と費用を確認するところから始められます。口座を開くことと、特定の配当株を購入することは別の判断です。
配当株と無配株に関するよくある質問

配当株と無配株はどちらがおすすめですか?
一律には決まりません。配当を使う予定、運用期間、企業の成長力と財務、購入価格を踏まえ、配当と株価変化の合計で比べてください。
花王は何期連続増配していますか?
公式発表では2025年12月期に年間154円の配当を実施し、36期連続増配を達成しました。今後の増配や投資成果を保証する実績ではありません。
花王の2026年配当予想は156円ですか?
分割前の株数基準で換算した年間予想が156円相当です。2026年8月公表の決算短信では、中間78円は分割前、期末予想39円は分割後の基準です。
今から花王を100株買えば年間1万5,600円もらえますか?
その計算にはなりません。現在の100株は分割後の株数です。期末の条件を満たす場合、期末予想39円での計算は税引前3,900円で、過去の中間配当は受け取れません。
配当利回りが高い株ほど安全ですか?
安全性は利回りだけでは分かりません。株価下落で見かけの利回りが上がる場合や、減配の可能性があります。利益、現金、配当方針も確認してください。
無配なら必ず成長株ですか?
いいえ。成長投資を優先する場合も、業績不振などで配当できない場合もあります。無配の理由と、資金の使い方を確認しましょう。
配当を受け取れば株価が下がっても損しませんか?
配当より値下がり額が大きければ、投資全体ではマイナスです。保有株の評価額と配当を合計して、当初の投資額と比べます。
NISAなら配当金は自動的に非課税ですか?
国内上場株式の配当は受取方式に注意が必要です。株式数比例配分方式を選んでいるか、利用先の証券会社で確認してください。
まとめ|配当の有無から、利益・資金の使い方・合計収益へ

花王の36期連続増配は株主還元の実績として確認できる材料です。ただし、配当の有無だけでは投資先の優劣は決まりません。配当と株価の変化、利益と現金、投資した資金の成果を組み合わせて考えましょう。
まずは保有銘柄一つについて、配当予想、株数の基準、配当性向、株価を含む損益を書き出してみてください。数字をそろえると、「配当があるから持つ」から一歩進んだ判断がしやすくなります。
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