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退職金もiDeCoも税制優遇があるから、同じ年に一括で受け取っても税金はかからない。そう考えて、受取時期を決めていませんか。実は、それぞれの金額を別々に控除へ当てはめると、手取りを見誤る場合があります。
会社の退職金とiDeCo一時金を同じ年に受け取る場合、勤続期間や加入期間の重複を調整して退職所得控除を計算します。勤続35年の期間内にiDeCoの控除対象期間がすべて収まり、退職金2,000万円とiDeCo800万円を受け取る例では、課税退職所得は475万円、税額の目安は合計約100.8万円です。
ただし、この金額は条件を固定した2026年受給の試算です。すべての人が同じ税額になるわけではありません。この記事では計算の順番、同年受取と年をずらす場合の違い、一時金・年金・併用の比較、請求前にそろえる資料を解説します。
先に押さえるポイント
- 退職金とiDeCo一時金は、原則として退職所得として扱う。
- 同年受取では、控除を別々に満額使えるとは限らない。
- 控除計算で大切なのは受取金額だけでなく、期間の始まりと終わり。
- 勤続35年の退職所得控除は通常1,850万円。退職金2,000万円だけでも課税部分は残る。
- 受取年を分けても、前年以前の一時金との重複調整が必要な場合がある。
- iDeCoを年金にすれば必ず無税になるわけではない。公的年金等と合算して考える。
退職金とiDeCo一時金の税金|退職所得控除の基本

国税庁は、会社の退職手当のほか、確定拠出年金法に基づく老齢給付金として受け取る一時金も、退職所得とみなすと説明しています。一般的な退職所得は、給与などと区分して税額を計算します。
通常の計算の出発点は、(退職金等の収入金額-退職所得控除額)×2分の1です。控除を超えた金額の全額に、そのまま所得税率がかかるわけではありません。役員等の短い勤続期間などには例外があるため、ここでは一般の長期勤続の例を扱います。
| 控除計算上の年数 | 通常の退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×年数。80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(年数-20年) |
勤続35年なら、控除は1,850万円
勤続35年の通常の控除額は、800万円+70万円×15年=1,850万円です。会社の退職金が2,000万円なら、控除との差額は150万円、2分の1にした課税退職所得は75万円となります。
したがって、「退職金2,000万円も控除で税金ゼロ」という前提は、この条件では成り立ちません。iDeCoと合わせる前に、会社の退職金単独でいくら控除を使うかを確かめることが大切です。
年数の端数と、重複期間の計算は分けて確認する
通常の勤続年数に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げます。ただし、複数の退職金等の重複期間を調整する計算まで、すべて同じ切り上げ方になると考えないでください。加入の開始・終了、制度間の移換などの履歴も含め、支払者に期間の算定を確認します。
退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると控除はどうなる?

同じ年に複数の支払者から退職手当等を受け取る場合、源泉徴収では、すでに受け取った退職手当等を含めて計算します。会社とiDeCoで別々に「自分の控除」を満額使える仕組みではありません。
出典 国税庁・同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき
iDeCoの期間が、会社の勤続期間の中にすべて収まる例
以下の条件を仮定します。実際の個人の税額を確定するものではありません。
- 2026年中に会社の退職金2,000万円とiDeCo老齢一時金800万円を受給する。
- 会社の控除対象勤続期間はちょうど35年。
- iDeCoの控除対象期間はちょうど20年で、その全部が会社の35年間に含まれる。
- ほかの退職手当等や過去の受給による調整はない。
- 短期退職手当等・特定役員退職手当等に該当せず、障害退職の加算もない。
- 居住者で、必要な申告書と資料を正しく提出する。
この場合、20年を35年へ単純に加えて55年とは計算しません。重複していない期間を加味して整理すると、控除を計算する年数は35年で、退職所得控除額は1,850万円となります。
受取額の合計2,800万円から1,850万円を差し引くと950万円。その2分の1である475万円が課税退職所得です。iDeCo単独なら20年の通常控除800万円に収まる金額でも、同年受給の合算計算では結果が変わります。
重なっていない期間があれば、同じ結論にならない
iDeCoの控除対象期間の一部が会社の勤続期間の外にある場合などは、控除額の計算が変わります。勤務先を変えた人、企業型DCから資産を移した人、過去にも退職金を受け取った人は、金額と「勤続35年」という情報だけでは計算できないことがあります。
まず会社の勤続期間とiDeCo等の期間を、それぞれ年月で横に並べてみましょう。「何年積み立てたか」と「退職所得控除に使う期間」は、記録に基づいて照合する必要があります。
退職金2,000万円+iDeCo800万円で税金約100万円?計算を確認

前述の条件に基づき、2026年の所得税・復興特別所得税と、退職所得に対する住民税を計算します。源泉徴収等の目安で、未使用の所得控除や確定申告による精算などは反映していません。
| 計算項目 | 計算・金額 |
|---|---|
| 受取額の合計 | 2,000万円+800万円=2,800万円 |
| 退職所得控除 | 800万円+70万円×15年=1,850万円 |
| 課税退職所得 | (2,800万円-1,850万円)×1/2=475万円 |
| 所得税本体 | 475万円×20%-42万7,500円=52万2,500円 |
| 所得税・復興特別所得税 | 52万2,500円×1.021=53万3,472円。1円未満切り捨て |
| 住民税 | 475万円×10%=47万5,000円 |
| 税額の合計 | 100万8,472円 |
| 受取総額から上記税額を引いた金額 | 2,699万1,528円 |
出典 国税庁・退職手当等に対する源泉徴収、速算表による計算と端数処理
出典 横浜市・退職所得に係る住民税の課税の特例。合計税率10%
課税退職所得475万円は、税額475万円ではない
475万円は税率を当てはめる課税対象額です。受取額2,800万円の全体に20%を掛ける計算でもありません。所得税は速算表の控除額を差し引き、住民税を別に計算します。
また、約100.8万円は2,800万円全体に対する上記条件の税額です。これをそのまま「iDeCo800万円だけにかかる税金」と表現すると、会社分との関係が分からなくなります。受給方法を比較する場合は、会社の退職金も含めた合計手取りで見ましょう。
退職金2,000万円だけなら、同じ条件で約11.3万円
会社の退職金だけを受け取る比較例では、課税退職所得75万円に対し、所得税等は75万円×5%×1.021=3万8,287円、住民税は7万5,000円で、合計11万3,287円となります。これも2026年の源泉徴収等の単純な試算です。
この比較だけでは、iDeCoを別の年や年金で受け取る場合の税額は分かりません。将来の受取時にも税金や費用が生じ得るため、「同年受取をやめれば約100万円を丸ごと節税できる」とは判断できません。
受取年をずらせば非課税?2026年改正と10年・19年の注意点

受取年を分けても、前年以前に受け取った退職手当等との期間の重複が調整対象になる場合があります。重要なのは受取順序です。同じ「年をずらす」でも、iDeCoが先か、会社の退職金が先かで確認する範囲が異なります。
| 受取の順序 | 確認する主な範囲 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 同じ年に退職金とiDeCo一時金 | その年の支払済み退職手当等を含めて計算 | 控除を別々に満額使う前提にしない |
| iDeCo老齢一時金が先、会社の退職金等が後 | 2026年以後の対象一時金について、後の受給年の前年以前9年内を確認 | いわゆる10年ルール。適用時期と経過措置も確認 |
| 会社の退職金等が先、iDeCo老齢一時金が後 | 後の受給年の前年以前19年内を確認 | 数年ずらすだけでは重複調整がなくなるとは限らない |
出典 国税庁・令和7年度の源泉所得税の改正のあらまし、退職所得課税の見直し
出典 国税庁・退職所得申告書の記載要領、前年以前9年内・19年内等の記入範囲
2026年からの「10年ルール」は、まず受給年で考える
改正は、2026年1月1日以後に支払を受けた確定拠出年金の老齢一時金について、後で会社の退職金等を受け取る年の前年以前9年内にある場合の調整範囲を広げたものです。過去の受取時期に応じた経過的な扱いもあるため、すべての過去のiDeCo一時金を一律に9年で扱うわけではありません。
例えば、2026年に対象のiDeCo一時金を受け、2035年に会社の退職金を受けるなら、2026年は2035年の前年以前9年内に入ります。2036年なら、この2026年の一時金は同じ9年の範囲から外れます。ただし、これは年の範囲を示す例で、退職金の受給時期を自由に選べることや、税金ゼロを保証するものではありません。
先に退職金を受け取る場合は、19年の範囲を確認
iDeCo老齢一時金を受け取る年の前年以前19年内に、別の退職手当等を受けている場合も確認が必要です。退職金を先に受けた後、iDeCoを数年待つだけで別枠の控除を満額使えると考えないでください。
過去の受取額がその時の控除額より小さい場合などには、期間の再計算を含む特例があります。自分の税額を決める際は「10年」「19年」という呼び名だけで判断せず、源泉徴収票と期間の記録を用意して確認しましょう。
iDeCoは一時金・年金・併用のどれがよい?比較するポイント

iDeCoの老齢給付金には、一時金、年金、両者を組み合わせる受取方法があります。利用できる方法や年金の期間などは運営管理機関に確認してください。年金は通常5年以上20年以下の有期年金で、機関によって終身年金を扱う場合もあります。
| 方法 | 税務上の主な考え方 | 合わせて見る項目 |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職所得控除を使う退職所得として計算 | 会社の退職金、過去の一時金、期間の重複 |
| 年金 | 公的年金等に係る雑所得として計算 | 国民年金・厚生年金等との合計、年齢、他の所得 |
| 一時金と年金の併用 | それぞれの受取額・時期で計算 | 選べる比率、受給期間、手数料、生活費 |
年金なら、公的年金等控除を別枠で使えるわけではない
確定拠出年金を年金形式で受け取る場合は、国民年金・厚生年金などとともに公的年金等の枠で所得を計算します。iDeCo年金だけに、もう一つ独立した公的年金等控除が付くわけではありません。控除額は年齢や他の所得によっても異なります。
出典 国税庁・高齢者と税、確定拠出年金を含む公的年金等の所得計算
受取方法を比べる際は、税金に加え、社会保険料等への影響の有無を自分の加入制度で確認し、給付時の手数料も見ます。年金方式が常に有利、一時金が常に有利とは決まりません。
受け取らずに待つ場合も、期限と運用リスクがある
iDeCoは受給可能な年齢に達してから、75歳までの間で受給開始時期を選ぶことができます。60歳から受け取るには通算加入者等期間などの条件があり、全員が同じ年齢で受け取れるわけではありません。
税金のために受取を待つ間も、保有商品の値動きや手数料を考慮します。受給時期を遅らせれば資産が増えるという保証はありません。必要な生活費を先に確保できるかも確認しましょう。
制度全体と掛金段階の優遇を合わせて理解したい人は、iDeCoの2026年改正と掛金の節税効果も参考にしてください。受取時の課税だけで、積立期間全体のメリットがゼロになるとは限りません。
受け取る前に何をする?資料をそろえる5ステップ

- 会社の退職金の見込額、支給時期、控除対象の勤続期間を確認する。
- iDeCo・企業型DC等の残高、控除計算に使う期間、移換履歴を確認する。
- 過去に受けた退職金・一時金の源泉徴収票を集める。
- 同年一時金、別年一時金、年金・併用の候補を合計手取りで比べる。
- 申告書・添付資料の提出先と期限を、各支払者に確認する。
同じ年の前の源泉徴収票を、後の支払者へ提出する
その年にすでに別の退職手当等を受け取っている場合、後の支払者に提出する退職所得の受給に関する申告書へ、前の支払者、支払額、税額、支払日、勤続年数などを記入し、源泉徴収票を添付します。複数の支払者へ同時に提出する場合は、申告書の提出順位も確認します。
申告書を出さない場合の源泉徴収は、最終税額と違うことがある
退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合、国税庁は支給額に20.42%を掛けた所得税等を源泉徴収し、本人の確定申告で精算する扱いを案内しています。源泉徴収された額だけを見て、本来の税額と決めつけないでください。
出典 国税庁・申告書の提出を受けていない場合の源泉徴収と精算
受取方法の相談には、金額だけでなく期間の記録が役立ちます。税額は税務署や税理士、支給手続きは勤務先・iDeCoの運営管理機関など、確認したい内容に応じて相談先を分けると整理しやすくなります。
受給方法は、退職後の生活費と一緒に考える
税額が小さくても、必要な時期に現金が足りなくなれば別の問題が起こります。退職から公的年金の受給開始までの期間、住居費、医療費、働く収入も合わせて確認しましょう。
退職時期も検討中なら、60歳で退職するか65歳まで働くかの判断軸へ、年金と貯蓄の取り崩しを具体的に見たい人は、年金・貯蓄・働く収入から老後資金を考える試算へ進めます。
受給後の資金管理やNISAを検討する人へ
受取金額が分かったら、近く使うお金と長期で運用できるお金を分けます。投資口座を比較する場合は、商品、費用、出金のしやすさ、認証機能を確認しましょう。退職金を受け取ったからといって、すぐに全額を投資する必要はありません。
NISAへの資金移動が、すでに生じた退職所得の税金を取り消すわけではありません。受給時の税金と、受給後の運用は分けて検討してください。
退職金とiDeCoの同年受取に関するよくある質問

退職金とiDeCoは同じ年に受け取ると必ず損ですか?
必ずではありません。受取額、期間の重複、過去の一時金、他の所得、生活費などによって異なります。同年受取と別の方法の合計手取りを比較しましょう。
勤続35年の退職所得控除はいくらですか?
通常は800万円+70万円×15年で1,850万円です。特例やほかの退職金等による調整がない場合の金額です。
退職金2,000万円だけなら非課税ですか?
勤続35年で通常の計算なら課税退職所得は75万円です。控除額1,850万円を超えるため、自動的に税金ゼロにはなりません。
課税退職所得475万円は税額ですか?
いいえ。税率を当てはめる対象額です。本記事の2026年受給の条件では、所得税等と住民税の合計は約100.8万円となります。
iDeCoを先に受け、5年後に退職金を受ければ大丈夫ですか?
2026年以後の対象老齢一時金には前年以前9年内の確認が必要です。従来の5年という説明だけで判断せず、受取年と期間の重複を確認してください。
退職金を先に受け取った場合も同じルールですか?
順序が違えば確認する範囲も異なります。後でiDeCo老齢一時金を受け取る場合、前年以前19年内の退職手当等が確認対象になります。
iDeCoを年金で受け取れば税金はかかりませんか?
必ず非課税になるわけではありません。公的年金等に係る雑所得として、厚生年金等との合計や年齢、他の所得を踏まえて計算します。
受給前に何を用意すればよいですか?
退職金・iDeCoの金額、控除計算に使う期間、過去の一時金の源泉徴収票、受取予定年、退職後の生活費をそろえると比較しやすくなります。
まとめ|金額と期間をそろえ、退職金とiDeCoを合算して考える

退職金とiDeCoには税制優遇がありますが、同じ年にそれぞれの控除を満額使えるとは限りません。受取額と期間の重なりを確認し、課税対象額、所得税等、住民税の順に整理することが大切です。
まずは勤務先と運営管理機関から資料を集め、一時金・年金・併用と受取年の候補を並べてみましょう。税金だけでなく、必要な時期に使える現金と、老後全体の手取りを見て決めることが重要です。
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